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ピロリ菌と胃がんの関係 その2〜除菌後胃がん〜

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は、前回のブログに引き続いて、「除菌後胃がん」についてお話します。前回ご説明した「除菌による胃がんの発生抑制」とあわせてお読み頂くと理解しやすいと思います。

 

なお、本ブログのコンセプトは「最新の医療ネタを分かりやすく解説する」ためのものですが、専門用語が数多く含まれます。医療関係者の方でなくとも理解できるように努めてはいますが、用語が多少難解であったり、そもそも扱うテーマが非常にマニアックです。この点をご容赦いただけますと幸いです。

胃がんの原因としてのピロリ菌

前回も強調しましたが、胃がんの原因として、明確なものは「ピロリ菌感染」です。裏を返すと、これまでのところ、ピロリ菌以外に胃がんの原因となるものは示されていません。

 

塩分や亜硝酸(干物や梅干しなど日本食に多く含まれる物質)が原因である、とされたこともありましたが、多くの研究の結果、これらが胃がんを直接引き起こすとは結論付いていません。

 

ピロリ菌感染が胃がんの原因であることは前回のブログで強調しましたが、近年胃がん検診としてピロリ菌に感染したことがない方や、ピロリ菌に感染したことがあっても除菌が成功した方を対象に内視鏡検査を行う機会が増えた結果、ピロリ菌に全く関係なく発生する「ピロリ菌陰性胃がん」や、ピロリ菌の除菌が成功したことがある方に発生する「除菌後胃がん」の存在が明らかになってきました。

 

今回は、この「除菌後胃がん」についてご説明します。「ピロリ菌陰性胃がん」については次回のブログであらためてご説明します。

除菌後胃がんの定義

ピロリ菌の除菌後に見つかる胃がんを広義で除菌後胃がんと呼びますが、よくよく考えると以下の3パターンが考えられます。

 

⑴ ピロリ菌の除菌前にすでに胃がんとして存在していたが見逃されていて、除菌後に初めて指摘された胃がん
  • ⑵ ピロリ菌の除菌前には指摘が難しいほど小さな病変として存在していて、除菌後に次第に大きくなり初めて指摘された胃がん
  • ⑶ ピロリ菌の除菌前には存在せず、除菌後に発生した胃がん

 

細かすぎてどうでも良いと思う方もおられるかもしれませんが、臨床的には以下の意味で重要です。

 

まず、(1)のケースは、いわゆる見逃し症例に該当するためあってはならないということです。

 

2020521日のブログでも書きましたが、適切な検査時間を守る(34分の範疇でできるだけ長く胃を観察する)ことが、早期胃がんの発見においては重要です。

 

他にも、

 

  • ・ 適切に鎮静(安定剤の使用)を行うことでげっぷや反射をなくす
  • ・ きちんと管理された解像度の高い内視鏡器具を用いる
  • ・ 検査医師が内視鏡診断やスクリーニングのためのトレーニングを受けている(≒内視鏡専門医)
  • ・ 検査結果を管理するための二重読影体制を敷いている

 

など、内視鏡検査の「質」を高めるための工夫も重要ですが、最もインパクトが大きいものは、「適切な検査時間」です。

 

なお、「二重読影体制」の意味と意義については、現在研究成果の学会発表及び論文化準備中であり、ある程度まとまったところで本ブログにおいてご説明致します。

 

次に(2)のケースについてですが、 実際には(3)のケースと判別が難しく、臨床的には同じ対応が必要になると考えます。

 

除菌後胃がんは非常に見つけづらい

ピロリ菌感染そのものが胃粘膜に炎症を引き起こし、炎症が胃がんの発育進展を促進する、という知見があり、除菌が成功した後に炎症が鎮静化した胃粘膜においては、胃がんの発育が緩徐になる可能性があります。

 

発育が緩徐なため、除菌後胃がんは、ピロリ菌陽性胃がんに比べて小さいというのが最も大きな特徴です。

 

また、除菌により周囲の胃粘膜の炎症がとれると、胃がんと周囲粘膜の境界が不明瞭になるケースも多く、診断自体が困難になることが多々あります。

 

当院での症例を供覧します。

 

除菌後胃がんは非常に見つけづらい

左が除菌後胃がん、右がピロリ菌陽性胃がんです。インジゴカルミンという青い色素をまいて、病変が浮き出るようにしています。

 

ピロリ菌陽性胃がんは強い発赤と表面の凹凸が強く認識しやすいのに対し、除菌後胃がんは発赤が弱く周囲の胃粘膜からわずかに陥凹した領域としてのみ認識可能です。

 

また、そもそも大きさが全く異なり、このような除菌後胃がんの発見のためには除菌後胃がんを発見するつもりで一生懸命観察しなければなりません。

 

以前当院で行った研究で、2018年度に内視鏡検査を行った方(平均年齢47.2歳)のうち、ピロリ菌陽性者は3.2%、ピロリ菌未感染者は76.6%に対して、ピロリ菌除菌後の方は20.4%でした(参考文献1)。また、除菌療法が広く普及するにつれ、除菌後の方の比率は年々増加しており、それに伴い除菌後胃がんの発見数も増加しています。

 

5人に1人はピロリ菌除菌後であり、日頃から丁寧に検査を行うことがいかに重要であるかがよく分かります。

 

参考文献1: Ishibashi et al. Quality Indicators for the Detection of Helicobacter Pylori-Negative Early Gastric Cancer: A Retrospective Observational Study. Clinical Endoscopy. 2020. Online ahead of print. (https://www.e-ce.org/journal/view.php?doi=10.5946/ce.2019.20

 

2020521日のブログでも書きましたが、当院では、特に除菌後の胃粘膜を観察する際にできるだけ長く時間をかけることが、除菌後胃がんの発見のために重要であることを示してきました。

 

ピロリ菌陰性胃がん

除菌後胃がんのうち、ピロリ菌を除菌後に新たに発生した胃がん(狭義で言うと上記⑶)は、長らくピロリ菌が感染していたせいで生じる粘膜萎縮という条件下に発生することがほとんどです。

 

粘膜萎縮を起こした状態のことを萎縮性胃炎と呼びますが、ピロリ菌を除菌した後でもこの変化は残ってしまいます。このため、除菌後に定期的にフォローアップのために内視鏡検査を受けていただくたびに、内視鏡レポートに「萎縮性胃炎」と診断が載ってしまう訳です。

 

この点で、除菌後胃がんは除菌が成功した後にも「過去のピロリ菌感染」の影響を受けた発がん様式をとるため、広い意味ではピロリ菌関連胃がんとも言えます。

 

一方で、ピロリ菌感染が全く関連ない胃がんというものも存在します。次回は、この「ピロリ菌陰性胃がん」についてご説明致します。

 

内視鏡センターのページはこちらです。

まとめ

  • * ピロリ菌の除菌療法が普及するにつれ、除菌後胃がんの発見数は年々増加している。
  • * 除菌後胃がんはピロリ菌陽性胃がんに比べ、小さく境界不明瞭なため発見しづらく、発見のためには内視鏡検査の際に観察時間を長くとる必要がある。

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