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内視鏡治療可能な早期大腸がんの診断法

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は前回の内容の続きで、内視鏡治療可能な早期大腸がんの診断法についてご説明いたします。

 

内視鏡治療とは

 

一般にがんを対象とした内視鏡治療と一括りに言っても、全身麻酔を併用する腹腔鏡手術と、全身麻酔を必要としない内視鏡手術の両方が含まれます。一部には全身麻酔下に行う内視鏡手術もありますが、今回は、「全身麻酔を必要としない内視鏡手術」の中で、特に「大腸がん」に限定してお話します。

 

内視鏡治療は、普段皆様が受けられる胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査の延長上の治療です。特に我々のようなクリニックで外来でも行うことができる大腸ポリープの切除は、「内視鏡的大腸ポリープ切除術」という保険診療名の内視鏡治療ですが、早期大腸がんの一部は、条件を満たした場合にはこの内視鏡的大腸ポリープ切除術で根治が可能です。

 

では、どのようなケースが根治可能で、どのようなケースがこの内視鏡的大腸ポリープ切除術の範疇を超える治療が必要になるのでしょうか。

 

外来で治療可能な大腸がんとは

 

そもそも早期大腸がんと進行大腸がんの違いはなんでしょうか。

 

進行大腸がんと聞くと、見つかったらもう手遅れ、と誤解される方が多いのですが、必ずしもそうではありません。

 

早期大腸がんと進行大腸がんの違いは、がんがどこまで潜り込んでいるかで分けます。大腸を輪切りにしてみると、一番表面に「粘膜」がありますが、その下には「粘膜下層(ねんまくかそう)」という薄い層があり、そのさらに下に「筋層」という筋肉の層があります。そのさらに外側は「漿膜(しょうまく)」という非常に薄い膜で覆われています。全てのがんは粘膜から発生し、次第に下の層に浸潤していきますが、がんの広がりが粘膜下層までにとどまっているものを早期大腸がんと言います。

 

すなわち、筋層より深く浸潤したがんは全て進行大腸がんに区分される訳で、周囲のリンパ節や肝臓、肺などに転移する前の比較的早い段階のがんも進行大腸がんに含まれることになります。進行大腸がん、と診断されても手術さえ受ければ完全に治癒することができるケースがあるのもこのためです。

 

内視鏡治療が可能なのは、浸潤が粘膜下層までに限られる早期大腸がんに限定されます。

 

つまり、我々内視鏡医は、大腸がんを疑う病変を見つけた場合には、その場その場で「内視鏡治療可能か=がんだった場合に粘膜下層までの浸潤にとどまっているか」を判断し、治療方針を決定しているのです。どこまで深く浸潤しているか診断(予測)することを、深達度診断と呼びます。

 

内視鏡治療に進む前に、いかに正確に深達度診断ができるか重要ですが、この20年ほどでこの領域は目覚ましい進歩を遂げました。

 

大腸がんの深達度診断に最も有効なツール「ピットパターン診断」

 

大腸内視鏡が普及し始めてしばらくした後、今から30年ほど前(1990年代)、工藤進英先生(現昭和大学横浜市北部病院消化器センター長)らが「Pit pattern診断(ピットパターン診断)」という診断法を確立されました。

 

Pit patternとは、大腸粘膜の表面の構造を拡大内視鏡で観察したときに見える模様のことです。普通に拡大しただけでは良く分からないのですが、クリスタルバイオレットという特殊な染色液で粘膜表面を着色することで、表面の構造が見やすくなること、そして同じがんでもごく浅い「粘膜がん」と「浸潤がん」の区別がつけられること、さらには浸潤がんの中でも浸潤が粘膜下層までにとどまる「粘膜下層浸潤がん」と「進行がん」の区別までもが可能になることが明らかになりました。

 

厳密に言うと、粘膜下層浸潤がんの中でも一定の条件を満たした場合にのみ内視鏡治療が可能なのですが、非常に専門的になるためここでは割愛します。

 

我々内視鏡医はこのPit pattern診断を深達度診断の基礎とし、この20年間診断学の確立に日々邁進して参りました。私も以前、昭和大学でPit pattern診断について修行しております。

 

その後、15年ほど前(2000年代)にNBIが開発されたことが次のブレイクスルーとなりました。

 

NBI併用拡大内視鏡はPit pattern診断の代用となり得る

 

食道がんや胃がんのNBI診断については前回ご説明しましたが、大腸がんにおいてもNBI診断は非常に有用であることが証明されています。

 

Pit pattern診断は非常に有効な診断法ですが、ただ一つの欠点が、染色を要するということです。

 

染色法は熟練した内視鏡医でなければ色むらができてしまったり、またせっかくうまく染色できていても経験がなければPit pattern診断に結び付けられないなどの限界がありました。

 

NBI併用拡大内視鏡は染色を必要とせず、拡大してピントを合わせるだけ(と言ってもかなりの習熟を必要とするのですが)で、再現性のある画像が得られます。NBI併用拡大内視鏡で得られた膨大な数の早期大腸がんの画像の検討の結果、2000年代後半には昭和大学や広島大学をはじめとする多くの専門施設で独自のNBI診断学が確立されました。そして、2010年代に入って、これらの分類を統一し、日本全国共通で使用可能なNBI診断法「JNET分類(The Japan NBI Expert Team分類)」が確立されたのです。

 

現在関連学会では、このJNET分類の妥当性について侃侃諤諤の議論が進められており、今後より広く使用されることになると考えます。当院でも、大腸内視鏡検査を受けていただき大腸ポリープあるいは早期大腸がんを疑う病変を見つけた際には、必ずJNET分類に即した診断法を行うようにしています。

 

一方でJNET分類にも診断の限界があり、必要に応じてPit pattern診断と併用することの重要性も強調されています。

 

実は深達度診断に関してはすでに次の段階を迎えつつあり、まさにパラダイムシフトとも言えるのですが、これは回を改めて近いうちにご説明いたします。他業種でも導入が著しい人工知能(AI)を利用した診断学です。

 

さて次回は、内視鏡治療の具体的な方法についてご説明します。

 

まとめ

 

・ 浸潤が粘膜下層までにとどまる早期大腸がんが内視鏡治療の適応になる。

・ 粘膜下層浸潤がんの予測(深達度診断)には、Pit pattern診断とNBI併用拡大内視鏡が有用である。

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