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ピロリ菌について

皆様こんにちは。小金井つるかめクリニック消化器内科の尾﨑良です。
この度、2025年4月より常勤医として勤務しています。
よろしくお願い致します。

2024年に日本で「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」が改訂されました。これは前回の改訂から8年ぶりのこととなります。
今回はH.pylori感染症についてお話ししたいと思います。

ピロリ菌ってなに?

ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、通称ピロリ菌(H.pylori)は、特に胃や十二指腸に住み着き、炎症を引き起こす細菌です。他の多くの細菌と違い、一度感染すると何十年にもわたり体内に残り続けます。除菌治療をしない限り、自然に体からなくなることはほとんどありません。このピロリ菌感染は、胃や十二指腸の潰瘍、胃がんのリスク要因の一つとされています。

どうやって感染するの?

ピロリ菌は、主に5歳頃までの免疫機能が未成熟な子どもの時期に感染すると考えられています。感染経路は「経口感染」、つまり口を通して体内に入る形です。過去には、下水の不備で便や吐物が飲み水に混じることで感染することが主な原因でしたが、現代日本では上下水道が整備され、このような水を介する感染はほとんどなくなったと考えられています。また、家族内で感染しやすいこともわかっています。日本での研究によれば、ピロリ菌が陽性の母子や父子の菌を調べたところ、同じ菌が確認されたという報告があります。このことから、家族内での感染が現在の主な経路と考えられていますが、実際に親子間でいつどのように感染するのかはまだわかっていません。

ピロリ菌と胃がん予防

ピロリ菌の感染は胃がんのリスク要因であり、感染者への除菌は胃がんの発症を予防するために非常に重要です。2013年から、日本ではピロリ菌感染による胃炎に対して除菌治療が健康保険で受けられるようになりました。
除菌を行うタイミングは、若いうちが望ましいとされています。胃の粘膜の状態によって予防効果が変わるためです。例えば、29歳までに除菌を行うと胃がんの予防効果は99.9%あり、40~49歳で除菌しても92.7%の予防効果があると報告されています(参考1)。高齢者においても、除菌治療は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に役立つため推奨されます。ただし、80歳以上の方に対する除菌治療の有効性や安全性については、まだ十分な研究が行われていません。

以上が、ピロリ菌に関する基本的なお話です。
ここからはガイドラインの改訂を踏まえ、ピロリ菌の診断や治療について触れていきます。

ピロリ菌の診断について

ピロリ菌の除菌治療を保険で受けるためには、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で感染の確認を行った上でピロリ菌に感染しているかどうかを確認する検査をする必要があります。ピロリ菌に感染しているかを確認する検査には、治療を始める前の「感染診断」と、治療後の「除菌判定」があります(表)。新しいガイドラインでは、これらの検査についての注意点が詳しく示されています(参考2)。

感染診断

除菌前に内視鏡検査を実施する
胃粘膜全体の感染状態を評価できる検査 尿素呼気試験
便中抗原測定法
胃内液を用いた核酸増幅法
生検部位の感染状態のみを評価する検査 培養法
病理組織学的検査[鏡検法]
迅速ウレアーゼ試験
菌体・菌由来の成分を対象としない検査 H.pylori抗体検査[血清]
補助診断 H.pylori抗体検査[尿]、内視鏡画像診断、胃X線画像診断、血清ペプシノゲン検査
除菌判定

除菌治療薬中止後4~6週以降に行う
胃粘膜全体の感染状態を評価できる検査 尿素呼気試験
便中抗原測定法
生検部位の感染状態のみを評価する検査 病理組織学的検査[鏡検法]
菌体・菌由来の成分を対象としない検査 H.pylori抗体検査[血清]
補助診断(除菌前との比較が重要) 内視鏡画像診断
血清ペプシノゲン検査

表:成人におけるH.pylori感染診断時と除菌判定時の検査

例えば、広く使われている検査の1つに「ピロリ抗体検査」があります。この検査は、ピロリ菌に感染すると体内で作られる抗体を血液検査により測定します。胃薬の影響を受けず、採血だけで確認できるので、いつでも簡単に行える便利な方法です。ただし、除菌した後も抗体が消えるまでには時間がかかるため、菌が本当にいなくなったかを確認する除菌判定のためには、他の検査が推奨されます。

受診される方の中には「除菌治療は受けたけど、その後の確認はしていなかった」や「除菌したのに健診の検査でまた陽性と出た」と相談に来られる方がいます。こうしたケースでは、検査の特性を考慮して、どうするべきかを一緒に考えていきます。

ピロリ菌の治療について

新ガイドラインでは、治療の流れをわかりやすく示すフローチャートが導入されました。ピロリ菌が確認された場合、まずどの抗菌薬が効くのかを調べることが推奨されています。

日本での一般的な治療法は、酸を抑える薬と2種類の抗菌薬、合わせて3種類の内服薬を7日間使う方法です。これを「一次除菌治療」と呼び、成功率は90%以上です。ただし、一次治療で除菌できない場合は、薬を変えて「二次除菌治療」に進みます。また、三次除菌治療もありますが、これは保険が効きません。

治療の成功には、抗菌薬に対するピロリ菌の耐性の有無、治療中の胃酸の抑制具合、そして薬をしっかり飲むかどうかが重要です。最近では、特にクラリスロマイシン(CAM)という抗菌薬に耐性を持つピロリ菌が増えており、胃液を使って耐性を迅速に調べる方法が保険適用になりました。

日本で行われた研究によると、ピロリ菌の感染者をいくつかのグループに分けて治療した結果が報告されています。通常の一次除菌治療では、このCAMが使われます。CAMが効く場合、除菌の成功率は非常に高く、96.3%に達します。しかし、CAMに耐性を持つ菌がいると、この成功率は82.9%に下がってしまいます。そこで、CAMが効かない場合には、代わりにメトロニダゾール(MNZ)という別の抗菌薬を使用することで除菌成功率は98.0%と高くなることが報告されています(参考3)。この研究結果は、菌の耐性に応じて適切な治療法を選ぶことが重要であることを示しています。
現在、日本で保険が適用される標準的な治療法は限られており、一次治療でのMNZの使用は保険適用外となっています。また、耐性を調べるためには胃液を採取する必要があるため、すべての診療所でできるとは限りません。しかし、耐性を確認した上で適した治療を行うことで、より高い成功率が期待できると考えられます。

まとめ

*ピロリ菌は胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍のリスク要因である。除菌治療は胃がん予防に非常に重要である。
*除菌を行うタイミングが若いほど胃がん予防の効果が高い。高齢になっての除菌治療は胃潰瘍や十二指腸の予防に役立つ。
*今回のガイドラインの改訂で特に診断法、治療法について詳細な情報が更新されており、これらに基づいて適切な診断、治療を選択していくことが重要である。

健康診断でピロリ菌陽性と指摘されたとき、ピロリ菌に関する検査結果について相談したいときなど、是非ご相談ください。
内視鏡センターのページはこちらです。

(参考1)Asaka M, Kato M, Graham DY. Strategy for eliminating gastric cancer in Japan. Helicobacter 2010;15:486-490.
(参考2)H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版, 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会編, 先端医学社, 東京. 2024.
(参考3)佐々木誠人, 前川高天, 西林宏之, 他. クラリスロマイシン耐性がヘリコバクター・ピロリ除菌治療に及ぼす影響-多施設共同レトロスペクティブ研究-. 日本ヘリコバクター学会誌2018;19(2):127-132.

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