潰瘍性大腸炎の治療薬 アザチオプリンについて

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潰瘍性大腸炎の治療薬 アザチオプリンについて

皆様こんにちは。小金井つるかめクリニック 消化器内科の川上智寛です。前回は潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬(ステロイド剤)について解説しました。

 

今回は難治例の治療薬の一つの選択肢である、免疫調整薬である「アザチオプリン」について解説します。

どんな時にアザチオプリンを用いるか


①多い量のステロイドでは効果があったが、減量とともに再燃する
                       →ステロイド依存例

②適正な量のステロイドを使用したにもかかわらず、効果が不十分
                       →ステロイド抵抗例


上記①or②の状況のときにステロイド以外の治療への切り替えを検討します。ステロイド依存例(上記①)でアザチオプリンを使用することがあります。

 

アザチオプリン(商品名:アザニン®、イムラン®)

 

もともと臓器移植時の拒絶反応の抑制や膠原病などの治療薬として使用されています。

 

2006年に「ステロイド依存性のクローン病の寛解導入及び寛解維持、ステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の寛解維持」の適応が追加承認されました。

 

アザチオプリンの使い方

ステロイドを減量すると悪化する方にアザチオプリンを追加することで、ステロイドを減量・中止ができる非常に良いお薬ですが、効果がでてくるまでに約2-3か月は必要です。

 

クスリの効果がでてくるまで、ステロイドを一時的に増量したり、減量ペースを緩やかにして対応する必要があります。

 

治療効果の判断には白血球数やMCV(赤血球1個あたりの平均的な大きさ)などが指標として使われます。目安として白血球数 3000/μl前後、MCV 100fL以上といわれています。

 

内服開始後、症状の改善度合いや採血データを踏まえてステロイドの減量や中止を行っていくことになります。

 

アザチオプリンの副作用

<主な副作用>

 

骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板が減少)、肝機能障害、発熱・発疹、口内炎・舌炎

全身倦怠感、脱毛、間質性肺炎、感染症などが報告されています。

 

動物実験や免疫調整薬の治療を受けた移植患者で「リンパ腫」の発生率が高いという報告があることが知られています。そういった発現リスクは年頭におく必要はありますが、実際に使用している炎症性腸疾患の患者さんでリンパ腫を発生することはまれです。

 

薬剤の効果と副作用による影響をよく検討して納得した治療を受けていただくことが必要です。

 

<飲み合わせに注意が必要なクスリ>

 

痛風の薬であるフェブキソスタット(フェブリク®)やアロプリノール(ザイロリック®)は薬の作用を強くしてしまい、副作用がでやすくなるので飲み合わせに注意が必要です。

 

NUDT15遺伝子多型検査

アザチオプリンは体内で代謝されて効果を発現します。薬効を示す代謝産物が多くなると薬剤の効果が強くなりますが、その一方で副作用強く出ます。

 

薬効を示す代謝産物を不活性化する酵素がNUDT15タンパクです。このタンパク質を作るための遺伝子は人によって多様性(遺伝子多型)があり、アザチオプリンの副作用のうち“重度の白血球減少”と“全脱毛”の出やすさがNUDT15遺伝子の多様性と関連することがわかっています。日本人では約100人に1人の割合で副作用が必発の遺伝子型がみられます。

 

2019年2月からNUDT15遺伝子多型検査が保険適応になりました。遺伝子は生涯変わらないものなので1度検査を受ければ大丈夫です。採血でこの項目をチェックするために約2万円ちょっとかかります。

 

自分がアザチオプリンによる強い副作用が出やすい体質かどうかを調べた上で使用を開始できた方が安心できます。しかし、この検査だけでアザチオプリンの副作用のすべてがでることを予測はできないので、少量から注意して使用を開始し、定期的な採血検査などは必要になります。

(日本炎症生腸疾患学会ホームページより)

副作用についてはNUDT15遺伝子多型の検査で重篤なものはある程度回避できる状況になっており、軽微なものも含めてアザチオプリンの服薬中止で改善が得られます。

 

過度に不安にならず、使用することが可能ですので担当医とよく相談してください。

 

消化器内科のページはこちらです。


まとめ

* ステロイド依存性の潰瘍性大腸炎において、アザチオプリンの使用でステロイド離脱が可能となる症例がある。

* 効果がでてくるまで2-3ヶ月を要するため、ステロイドの減量ペースなどに工夫が必要になることがある。

* 薬剤のアレルギー反応や用量に依存して出現する副作用もあるが、現在NUDT15遺伝子多型検査が可能であり、重篤な副作用については予測可能になった。

* 定期的な採血検査などで白血球や肝機能などを確認しながら使用すれば安全に使用することができる。

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