内視鏡治療の種類 その2~コールドスネアポリペクトミー(CSP)~

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内視鏡治療の種類 その2~コールドスネアポリペクトミー(CSP)~

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は前回の内容の続きで、内視鏡治療について、特にCold snare polypectomy(コールド・スネア・ポリペクトミー)についてご説明いたします。

 

なお、本ブログのコンセプトは「最新の医療ネタを分かりやすく解説する」ためのものですが、専門用語が数多く含まれます。医療関係者の方でなくとも理解できるように努めてはいますが、用語が多少難解であったり、そもそも扱うテーマが非常にマニアックです。この点をご容赦いただけますと幸いです。

 

内視鏡治療の種類(おさらい)

 

前回ご説明した通り、現在主流となっている大腸病変の内視鏡手術の方法は、大きく分けて3種類です。

 

①  内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)

②  内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)

③  コールドスネアポリペクトミー(Cold Snare Polypectomy:CSP)

 

このうち、①のEMRについては前回ご説明しました。また、以前のブログでご説明した通り、EMRの適応は、大きすぎない病変(およそ20mm程度)で、深達度が深すぎない病変(粘膜内がんあるいは、粘膜下層浸潤がんでも比較的浅いもの)に限られます。

 

EMRの適応を超えるもので、大きすぎる病変の場合には、②のESDという手法が選択されることが多いのですが、これは現時点では外来での治療が難しく入院が必要です。今回は詳細な説明を割愛させていただきます。

 

EMRの欠点

 

前回詳細をご説明した通り、EMRはスネアという輪っかのような器具をポリープにかけて、高周波装置という外部機器を用いて電気で焼き切る治療です。また、安全に焼き切るためには、事前に大腸ポリープの下に局注を行い病変と筋層を物理的に離す処置が必要です。また、一般的には切除断端は金属製のクリップで閉鎖(クリッピング)することが多いです。

 

EMRは病変を安全かつ正確に切除する上では非常に有用なのですが、いくつかの欠点があります。

 

一つ目の欠点は、「局注→通電・切除→クリッピング」という一連の操作において、ステップが多いため時間がかかる点です。同時に、各ステップにおいて必要な器具が異なるため、非常にコストがかかります(基本的に全ての器具はディスポーザブル、すなわち使い捨てです)。マクロな視点では、高コストの治療法は医療経済の圧迫にもなることが指摘されています。

 

二番目の欠点は、合併症として「遅発性出血(後出血)」のリスクがあることです。通電して焼き切るようにして切除するので、病変の下の血管(多くは粘膜の下の粘膜下層を走っています)を切っても、一時的には止血できていることがほとんどです。しかしながら、時間がたって24〜72時間以内に一度止血できていた血管断端が離開して、時間差をもって出血することがあります。これを「遅発性出血(後出血)」と呼びます。

 

大腸内視鏡検査を受けたことがある方はご存知だと思いますが、内視鏡検査前には、大腸ポリープ切除後には一定の頻度で「遅発性出血(後出血)」が起こり得ることを必ず説明されていると思います。

 

三番目の欠点は、「穿孔」のリスクがあることです。一番重篤かつ回避しなければならない合併症です。「穿孔」とは、その名の通り、ポリープ切除時に大腸の壁に穴が空いてしまうことです。大腸の壁は、内側から「粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜」の順に層構造を形成しています。EMRは、粘膜下層に局注をして膨隆を作って筋層との距離を作り、粘膜と粘膜下層の一部を切除してくる方法です。この過程で、局注が甘く距離をうまく作れなかったり、スネアをかけるときに大きくかけすぎたり、あるいは何らかの理由で粘膜下層が薄くなっていたりすると、筋層と漿膜に傷がつき穴が空いてしまうことがあるのです。

 

このような欠点を補うために開発されたのが、コールドスネアポリペクトミー(CSP)です。

 

コールドスネアポリペクトミー(CSP)の手順

 

EMRと手法の比較を下のシェーマでご説明します。

 

EMRはこちらです(前回の再掲載)。

そして、CSPはこちらです。

このように、CSPは局注を行わずにポリープに直接スネアリングをして切除してくる手法です。EMR用のスネアは通電による焼灼切除を前提にしているため、そのままスネアリングして縛っても切れません。スネアそのものが太すぎるのです。そこで、スネアそのものを細くかつほどよく鋭利にし、局注を行うことのなく粘膜だけを切除することが可能になりました。器具の改良がCSPを可能にしたのです。

 

大腸ポリープに対するCSPの実際

 

実際に当院で行った大腸ポリープのCSPの画像を供覧します。

 

左の画像がもとの大腸ポリープです。大きさは6mm程度です。このポリープにスネアを置いたのが右の画像です。スネアの径が10mmですから、ポリープのサイズがよく分かると思います。

 

次にスネアを用いてポリープを結紮したのが左の画像です。このまま切除すると、断端が右の画像のようになります。粘膜下層の大部分は残っていますので、通電せずともご覧のようにわずかにしか出血しません。

 

CSPの利点はEMRの欠点を補うことができる、という点につきます。一方で、CSPにも欠点があり、特に比較的新しい治療方法であることから、まだ十分に研究されていない部分もあります。

 

次回は、CSPの利点について、当院におけるデータもあわせてもう少し詳しく掘り下げてご説明してみようと思います。

 

内視鏡センターのページはこちらです。


まとめ

 

* 大腸ポリープに対するコールドスネアポリペクトミー(CSP)は、EMRの欠点を補う内視鏡手術法である。

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