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慢性便秘症の治療薬②

慢性便秘症の治療薬②(代替・補助治療薬/オンデマンド治療(頓服、頓用)について)

小金井つるかめクリニックの川上智寛です。

慢性便秘症の治療薬②(代替・補助治療薬/オンデマンド治療(頓服、頓用)について)

前回はガイドラインでエビデンスレベルA 、推奨度 強と位置付けられた以下の3種類の薬剤についてお伝えしました。

「浸透圧性下剤(塩類下剤、糖類下剤、ポリエチレングリコール[PEG])」

「上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)」

「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」

 

今回は代替・補助治療薬として記載されている「プロバイオティクス」「膨張性下剤」「消化管運動機能改善薬」「漢方薬」オンデマンド治療(頓服、頓用)が推奨された「刺激性下剤」「外用薬(坐剤、浣腸)、摘便」についてお話します。

代替・補助治療薬

  • 膨張性下剤

    腸内の水分を取り込み、便を膨張させ柔らかくすることで排便を促す下剤です。

    自然排便に近い効果で排便を促すため即効性はないものの耐性や習慣性はなく安全に使用できます。軽症の便秘に効果が期待できます。十分な水分摂取(150-200ml程度)をあわせて行いつつ、継続的な服用が必要になります。また腸内で水分を吸収して膨張するため腹部膨満感がでることがあります。

     

    バルコーゼ(カルメロースナトリウム)

    コロネル、ポリフル® (ポリカルボフィルカルシウム)

    日本で処方可能な薬剤は上記の2種類です。

    ポリカルボフィルカルシウムは過敏性腸症候群の薬剤で残念ながら日本で適応はありません。便秘症が保険病名になっているのはカルメロースナトリウムのみとなっています。

     

    消化管運動機能改善薬

    セロトニン(5HT)は消化管壁内の神経に作用して消化管の収縮と弛緩を調整しています。5HT4受容体刺激薬は慢性便秘症に対して有効性が示されていますが、現在、日本で使用可能な5HT4受容体刺激薬はガスモチン® (モサプリド)のみです。モサプリドは慢性便秘症に対して保険適応がなく、慢性胃炎に対してのみ使用可能です。

     

    漢方薬

    1. 水分を含ませてあげる効能がある生薬として「芒硝(ボウショウ)」「麻子仁(マシニン)」などがあります。

    芒硝を含む漢方:桃核承気湯、防風通聖散

    麻子仁を含む漢方:潤腸湯、麻子仁丸

     

    1. 大腸を動かしてくれる効能がある生薬として「大黄(ダイオウ)」があります。

    便秘の適応がある漢方の大半は大黄が含まれています。

    ①大黄甘草湯

    ②麻子仁丸

    ③桃核承気湯

    ④調胃承気湯

    ⑤潤腸湯

    ⑥桂枝加芍薬大黄湯

    ⑦防風通聖散

    ⑧大柴胡湯

    慢性便秘症に対してよく使われる漢方を大黄含有量が多いものから番号順で並べてみました。

    大黄が多いほど大腸を動かす作用が強いといえます。蠕動運動が亢進することで腹痛などの症状も出やすくなります。
     

    プロバイオティクス

    腸内に存在する有益な作用をもたらす生きた微生物を摂取・補給することを指します。

    ヨーグルトやサプリメントで摂取されることが一般的です。

    プロバイオティクスと密接に関係するものとしてプレバイオティクスがあります。

    プレバイオティクスは、腸内の有益な細菌の増殖や活動を促進する食物のことです。消化されない炭水化物や食物繊維などの栄養素がこれにあたり、主に食物から摂取されます。

    つまり、プレバイオティクスは腸内の良い細菌の活動を促進し、プロバイオティクスは有益な細菌を直接摂取して腸内環境を改善します。両方とも腸内のバランスを整え、良い効果をもたらすといわれています。

    慢性便秘症の場合、腸内細菌叢のバランスが崩れていることがあり、プロバイオティクスを摂取することで、腸内環境を改善し、便通を促進する助けになる可能性があります。ただし、個々の症状や体質によって効果は異なるため、医師に相談することが重要です。

    慢性便秘症を対象にしたRCTの解析でも「プロバイオティクスは安全に使用でき、その摂取により排便回数の増加や便秘に伴う腹部症状の改善、腸管通過時間の短縮に寄与する」といわれていますが、どれをどのように摂取したらよいのかといった指標がないのが実情です。ご自身にあったものを探して、良い効果があったものを継続してみることがよいでしょう。

オンデマンド治療(頓服、頓用)

刺激性下剤

腸を刺激して蠕動運動を亢進させて排便を促すタイプの下剤です。漢方薬の項目で触れた大黄も大腸の蠕動を高めるため腹痛が出やすいとお話したようにこの系統も使用により腹痛が起こります。

 

代表的な薬

プルゼニド®(センノシド)

アローゼン® (センナ)

ラキンベロン®(ピコスルファート)などがあります

 

これらの薬剤の効果発現時間は8-10時間と言われており、寝る前に服用するとちょうど朝に排便がある状況を作れます。「腸を動かして出す」薬なので効果が実感しやすいと思います。

「他の下剤じゃ効かない」「これじゃないと出ない」という感じになりやすく長期間の使用によって習慣化し、刺激がある状況に慣れてしまうことで大腸自身の蠕動する力が低下して徐々に効かなくなってしまいます。常用するのではなく、ここぞというときの切り札的な使い方の方が長く使えると思います。

 

外用薬(坐剤、浣腸)、摘便

坐剤:新レシカルボン坐剤®(炭酸水素ナトリウム坐薬)、テレミンソフト坐薬®(ビサコジル坐薬)

浣腸:グリセリン浣腸、微温湯浣腸

摘便:直腸に溜まった便を用手的に掻き出す処置

 

浣腸は即効性があり、薬液を注入したら数分〜数十分で便意を催します。

ビサコジル坐剤は結腸・直腸粘膜に作用して蠕動を活発にし、腸粘膜への直接作用により排便反射を刺激するといわれています。また結腸で水分吸収を抑える作用もあります。

炭酸水素ナトリウム坐剤は直腸内に炭酸ガスを発生させ、物理的に刺激することで排便を促します。

 

これらの外用薬や摘便は直腸に便が貯まっていないと効果が期待できません。

また連用により薬や摘便処置に頼りがちになり、自発排便が得られない状況になりかねません。排便リズムが整うまでの限定的な使用にとどめるようにしましょう。

おまけ

大腸メラノーシス(大腸黒皮症)

大腸粘膜がリポフスチンの沈着による色素沈着で黒っぽくなった状態をいいます。

アントラキノン系の薬剤(センナ、大黄、センノシド、アロエなど)の長期使用により引き起こされるといわれています。アントラキノン系の薬剤は耐性や習慣性があるため、大腸メラノーシスにならないためにも、また薬が効きにくくならないためにも頓用や短期間の使用にとどめることが推奨されています。漢方薬や刺激性下剤がアントラキノン系の薬剤にあたりますので、ガイドラインでも代替・補助治療薬/オンデマンド治療に記載されているのです。

内視鏡センターのページはこちらです。

まとめ

*便通異常症診療ガイドライン 2023が刊行された。
*ガイドラインに代替・補助治療薬もしくはオンデマンド治療と記載されている薬剤についても長年使用されている薬剤であり、安全にかつ効果的に使用可能である。
*長期使用によって耐性や習慣性が問題になるものもあるため、その点は十分注意が必要である。「浸透圧性下剤」「上皮機能変容薬」「胆汁酸トランスポーター阻害薬」と組み合わせて適切に使用することが大事になる。

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