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糖尿病の合併症について

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

 

今回は、糖尿病治療にあたり非常に重要なポイントである「合併症」について取り上げます。

糖尿病治療の目的である合併症予防

 糖尿病のため血糖値が高く、治療が必要である・数値を下げなければいけない、と言われても「どこも痛くも痒くもないのになぜ通院をしなければいけないんだ」と合点がいかない方が多いかもしれません。糖尿病のため血糖値が高いと、血管にダメージを与え、体のいろいろな部位に悪さをするのですが、自覚症状が出る頃にはだいぶ血管へのダメージが進んでいることが多く、自覚症状のないうちからきちんと数値をコントロールして進行を予防する必要があるのです。

 糖尿病の合併症は、細かい血管がダメージを受けることによる「細小血管合併症」と、比較的太い血管がダメージを受けることによる「大血管合併症」に分けられます。

細小血管合併症①:網膜症

 眼の奥(眼底)には多数の毛細血管があるのですが、糖尿病が進むとこれらの毛細血管がダメージを受け、眼の奥で出血を起こします。下図のごとく、単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症の順に進行していき、進行するとレーザー治療が必要となったり、不幸にして失明に至るケースもあります。日本人の失明の原因の第2位が糖尿病網膜症です(1位は緑内障)

 糖尿病と診断された時、私はまず「眼科に行きましょう」と患者さんに申し上げています。なぜなら、診断時点で進行した網膜症が存在する場合、急に血糖値を下げてしまうと眼の奥の出血がさらに悪化するケースがあるため、治療方針の決定にも非常に重要な影響を及ぼすためです。「内科で糖尿病があるから眼科で眼の奥を診てもらうよう言われた」とお電話すればすぐに話が通じますので、迅速な受診、適切な経過観察が重要です。

細小血管合併症①:網膜症

細小血管合併症②:腎症

 腎臓は腰のあたりに左右2つある、血液中の老廃物を処理し、尿を作る重要な臓器です。糖尿病が進行すると、腎臓にダメージが及び、血液検査や尿検査で異常が出てきます。

 典型的には、まず尿検査で尿蛋白が出現します。腎臓が傷つき、本来尿に漏れ出るべきではないタンパク質が漏れ出てしまっている状態です。そこからさらに進行すると、血液検査でクレアチニンという、腎臓の機能を図る数値が上昇してきます。糖尿病の患者さんは高血圧症を合併しているケースも多いですが、高血圧症もまた腎臓へダメージを及ぼしますので、複合的な要因で腎臓がダメージを受けることも多いです。

 腎障害が進行し、腎臓がついに自分の力で尿を作ることが難しくなると、透析という、下図のように血液を機械に通して、血液中の老廃物を掃除してもらう、ということを週3回ほど行うことが必要になります。日本人の透析導入原因の第1位は糖尿病性腎症であり、血糖値を良好にコントロールして腎臓へのダメージを防ぐことが重要です。最近は血圧の薬、糖尿病の薬で、腎症の進行を抑えることのできる薬も登場していますので、気になる方は医師に相談してみて下さい。

細小血管合併症②:腎症

細小血管合併症③:神経障害

 糖尿病が進行すると、足先から神経がダメージを受けていく末梢神経障害、体の調子を整える自律神経がダメージを受ける自律神経障害を引き起こすことがあります。

 よく外来に「足がしびれるので糖尿病が心配」と来院される患者さんがいらっしゃいますが、糖尿病の末梢神経障害は左右対称かつ足先から少しずつ始まることが特徴的です。「数日前から右足の太ももからふくらはぎにかけてしびれがあって・・・」という患者さんですと、糖尿病による神経障害の可能性は低いかと思います。逆に「半年前くらいから、両足先がジンジンしびれるような感じがあり、足の裏に砂利の上を歩いているような変な感触がある」だと、糖尿病性神経障害を疑います

 しびれ感、異常感覚以外にも、足先の感覚が鈍ってしまうこともあります。裸足で歩いていて怪我をしてしまったが、痛みに気づかず傷を放置してしまい、そこから菌が侵入し足が腐ってしまい(壊疽(えそ)と呼びます)、不幸にして足の切断に至るというケースもあります。怪我に限らず、水虫などから菌の侵入が起こるケースもありますので、糖尿病患者さんは入浴の際など、足を清潔にすることが重要です。

 以上、「神経障害」「網膜症」「腎症」が三大合併症と呼ばれます。神経、眼、腎臓の頭文字をとって「しめじ」と覚えることがあります。

細小血管合併症③:神経障害

大血管合併症、その他

 三大合併症と呼ばれる、神経障害・網膜症・腎症は毛細血管レベルの細かい血管がダメージを受けることで起こりますが、それより太い血管がダメージを受けて起こるのが大血管合併症です。動脈硬化性疾患という言い方をすることもあります。心臓の血管がダメージを受ければ心筋梗塞、脳の血管がダメージを受ければ脳梗塞、足の血管がダメージを受ければ閉塞性動脈硬化症という病気が起こります。最近では、特に心不全、心筋梗塞、狭心症などの病気を起こしたことのある人に優先して使った方がよいといわれている糖尿病の薬、血圧の薬も登場していますので、気になる方は医師に相談してみて下さい。

 その他、骨粗鬆症、認知症、歯周病、悪性腫瘍(がん)なども糖尿病と密接な関係があると言われています。閉経後の女性は特に骨密度が低下することがありますので、骨密度の検査を受けたことがなければ一度検討しても良いかもしれません。歯周病については、糖尿病を良くすると歯周病も良くなる、歯周病を良くすると糖尿病も良くなる、と密接な関係があり、定期的な歯科受診を怠らないようにしましょう。糖尿病では、肝臓癌、大腸癌、膵臓癌、子宮癌などのリスクが上昇することが知られています。年1回程度の腹部エコーや便検査、婦人科検診などによるチェックが望ましいです。

合併症を予防するために

 糖尿病が引き起こしうる様々な合併症について解説してきました。しかし、糖尿病は怖い病気だ、早死にする病気だ、と神経質に考えすぎる必要はありません。定期的に通院し、適切な治療を受け血糖値を良い数字にコントロールしておくことでこれらの合併症の発生を防ぐことができます。また、糖尿病のみならず、脂質・血圧の管理も動脈硬化の予防に重要ですので、診察の際はあわせてチェックしています。

 網膜症のチェックのためには、症状がなくても定期的に眼科へ通院し、眼の奥を診てもらうことが重要です。腎症の進行がないかは、3か月に1回、尿中アルブミンという数値を測ることで検査できます。動脈硬化の程度を調べるために、頸動脈エコー・血圧脈波検査を当院で行うことができます。悪性腫瘍のチェックだけでなく、脂肪肝や胆石の検査のために、定期的に腹部エコーを行うこともできます。私は血糖値のみならず、このような項目にも目を光らせ、患者さんが糖尿病のために体を悪くすることがないよう気を配っています。

まとめ

  • *糖尿病の細小血管合併症は、神経障害・網膜症・腎症がある
    *大血管合併症には、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などがある
    *その他、骨粗鬆症、認知症、歯周病、悪性腫瘍(がん)なども糖尿病と密接な関係があると言われる
    *定期通院により血糖値を良好にコントロールすることはもちろん、各種検査によりこれらの合併症が出現・進行していないかをチェックしていくことが重要である

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