糖尿病薬物治療その2:DPP4阻害薬について

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糖尿病薬物治療その2:DPP4阻害薬について

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

今回は糖尿病薬物療法その2、DPP4阻害薬について取り上げます。

DPP4阻害薬とは

 DPP4阻害薬というのは薬の種類名で、実際の薬物名でいきますと、院内では、グラクティブ®、テネリア®、トラゼンタ®の採用があります。また、前回紹介したメトホルミンの成分をミックスした、エクメット配合錠®も採用しています。DPP4阻害薬はメトホルミンに並んで糖尿病治療において極めてポピュラーな薬で、多くの患者さんが服用しています。

 作用メカニズムとしては、食後の血糖上昇を感知し、血糖値を下げる「インスリン」を作るのを助ける薬です。糖尿病患者さんは、自前でインスリンを作ることはできるが、肥満などが原因でせっかく作ったインスリンがうまく効いてくれない「インスリン抵抗性」のパターンと、体質・遺伝的な影響のためそもそも自前でインスリンを作る力が弱い「インスリン分泌不全」のパターンに大別することができます。この薬は食後の血糖上昇を感知しインスリン分泌を助ける薬ですから、後者のパターンの患者さんによく効くことが想定されます。特に日本人は民族的に「インスリン分泌不全」タイプの、やせ型だが体質的・遺伝的に血糖値が高くなりやすい、という方が多いため、DPP4阻害薬が重宝されることが多くなっています。

 少し踏み込んだ話をすると、肥満の方であっても、「インスリン抵抗性」に「インスリン分泌不全」が組み合わさって糖尿病を発症、という方もいらっしゃいます。肥満だけで糖尿病になるのであれば力士は皆糖尿病になっているはずですから、肥満患者さんではインスリン分泌不全を全く考慮しなくていいのか、と言われると必ずしもそうではありませんし、肥満患者さんでもDPP4阻害薬を内服すればある程度血糖値が下がる方も多いです。

 また、上述の通り、「配合錠」と呼ばれる、1錠の中に複数の薬の成分をミックスさせた薬が多く発売されているのもDPP4阻害薬の特徴です。やはり飲み薬の錠数は少ないに越したことはありませんから、よく組み合わせる薬については配合錠が発売され、患者さんの利便性向上に一役買っているのです。

服用に際しての注意点

 DPP4阻害薬の最大といっていいメリットは、副作用の少なさです。先月紹介したメトホルミンも非常に良い薬なのですが、お腹がゆるくなることがある、腎臓や心臓が弱っている・高齢の患者さんには要注意、などの注意点がありました。

DPP4阻害薬は、種類を選べば腎臓が弱っている患者さんにも投与することができますし、「この副作用が怖いから使いにくい」「こういった患者さんに投与することは安全性の面からためらわれる」ということがほとんどありません。副作用として多くはありませんが、水膨れを伴う皮疹を生じるケースがあるので、その際には皮膚科医との適切な連携が必要です。

 そんなに安全な薬なら、全ての糖尿病患者さんでDPP4阻害薬を使えば良いのではないか、自分は糖尿病だがDPP4阻害薬を内服していないのはなぜか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。先述の通り、この薬は「インスリン分泌不全」タイプの糖尿病の患者さんによく効くもので、自前でインスリンを作る力はあるがそれがうまく活かせていない「インスリン抵抗性」タイプの患者さんに優先して使う薬ではありません(下図参照)。また、後ほど別途紹介したいと思っていますが、DPP4阻害薬と似た薬だが、体重減少効果が強いといわれている薬(下図では「GLP-1受容体作動薬」と表記)もあり、減量が望ましい患者さんにはそちらを優先して使うこともあります。また、2009年発売と比較的歴史の浅い薬であることもあり、薬価を考慮した際、古くからあるメトホルミン(下図では「ビグアナイド」と表記)の方がコストパフォーマンスで勝る、ということもありえます。

 ただ、下図にも記載の通り、肥満のない「インスリン分泌不全」タイプが想定される患者さんの場合には、いの一番に使用が考慮される薬となっています。メトホルミンではびくともしなかった血糖値がDPP4阻害薬に変更したとたんみるみる改善していった、ということも多数経験しています。

DPP4阻害薬の適正使用

  DPP4阻害薬は副作用も少なく、日本人に多い「インスリン分泌不全」タイプによく効く、と極めて優れものの薬です。しかし、少し困ったこととしては、糖尿病の診療に慣れていらっしゃらない非専門の医師が診療にあたる際、「DPP4阻害薬であれば副作用が少ないと聞くから、下手に副作用リスクのある薬を使うよりはひとまず安全性重視でこれを使おう」と考え、本来であればDPP4阻害薬以外での治療が望ましいと思われる患者さんが漫然とDPP4阻害薬を内服しているというケースがあります。安全性の面では問題なくても、「本当はこちらの薬を使った方が患者さんにより多くの利益がありそうだ、副作用のリスクもこの患者さんでは低そうだ」と考え、説明の上薬剤変更を行いより良い治療を実現することができた、ということも多数経験しています。

 我々糖尿病専門医は、患者さんのライフスタイルは勿論ですが、体質的・遺伝的な問題、自前でインスリンを作る力がどの程度あるのかなども総合的にチェックし、数ある糖尿病治療薬の中から、患者さんひとりひとりに最適な薬物療法を提案するよう努めています。長期間同じ薬を飲んでいて主治医からは十分な説明がない、治療の見直しについて意見を聞いてみたい、という場合、糖尿病専門医の複数在籍している当院への相談をご検討ください。

DPP4阻害薬の適正使用

まとめ

  • *DPP4阻害薬は、食後の血糖上昇を感知しインスリン分泌を促進する、日本人に多い「インスリン分泌不全」タイプの糖尿病治療において活躍する薬である
    *副作用らしい副作用が少なく、内臓機能の低下している人、高齢者でも安全に使用することができる
    *便利であるがゆえにあまり深く考えずに処方されることが多く、コストパフォーマンスや病状を考えた際に最善の選択肢とは言えないのではないか、と思われるケースも散見され、専門医による適切な使用が望まれる

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