糖尿病薬物治療その4:GLP-1受容体作動薬について

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糖尿病薬物治療その4:GLP-1受容体作動薬について

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

今回はGLP-1受容体作動薬を取り上げます。

GLP-1受容体作動薬とは

 GLP-1受容体作動薬というのは薬の種類名で、実際の薬物名でいきますと、院内では、ビクトーザ®、トルリシティ®、オゼンピック®、リベルサス®の採用があります。ビクトーザ®は毎日の在宅自己注射薬、トルリシティ®、オゼンピック®は週1回の在宅自己注射薬、リベルサス®は毎日の内服薬です。

 作用メカニズムとしては、食後の血糖上昇を感知し、血糖値を下げる「インスリン」を作るのを助ける薬です。2月のブログで登場したDPP4阻害薬に似ていますが、こちらの方がより強力です。

 また、脳や胃腸に作用し、食欲を抑制し、体重減少がもたらされることがあります。食欲抑制は薬の種類や量によっても違うのですが、それを活かし、肥満があり体重減少が望ましい患者さんに優先的に使用することがあります(後述)

使用に際しての注意点

 GLP-1受容体作動薬の使用に際してはいくつか留意点があります。

 まず、上述の通り胃腸に作用し食欲を抑制しますので、下痢・便秘・吐き気などの消化器症状が出現するケースがあります。少しの胃のむかつき、胃もたれ程度であれば「これが話に聞いていた食欲抑制か」と思って我慢していただきたいのですが、日常生活に支障をきたしてまで使用していただきたい薬ではありませんので、継続が難しい場合は変更・中止を考慮しますから正直にお申し出ください。

 投与方法は、毎日の注射薬、週1回の注射薬、毎日の内服薬の3種類があります。注射薬の中でも、毎日よりは週1回で済むタイプが最近は人気です。インスリン注射で自己注射に慣れており抵抗がない、という方は注射薬を選択されることもありますが、注射は怖い・抵抗がある、という方は飲み薬を選択される方が多いです。在宅自己注射と言えど、院内でスタッフからレクチャーを受け、説明書通りに行えば難しいことはなく、痛みもそれほどではありませんが、内服薬で済むのであればそちらの方がありがたい、という意見もあり、内服薬の登場は朗報でした。

 しかし、内服薬のリベルサス®は、胃で吸収されやすくするために、下図のごとく飲み方に注意が必要です。

使用に際しての注意点

https://www.msdconnect.jp/products/rybelsus/info/action-mechanism/より

 まず、胃の中が空っぽの状態で内服することが重要ですので、朝一番の、1日のうち最初に口に含む水で内服することが必要です。お茶やジュースではなく、水で内服してください。水の量も注意が必要で、コップ半分程度の水でなくてはなりません。多すぎると胃で薬がうまく吸収されず、少なすぎると今度は胃の中で薬がうまく溶けないようです。

 さらに、そこから「少なくとも」30分間は、他の飲み物、食べ物、薬は一切摂らず、胃の中で先ほど飲んだ水と薬をそのままにしておく必要があります。30分を越せば、そこで物を口にしてもよいですし、1時間、2時間とそのままにしておいても大丈夫です。時間が長くなればその分胃の中で薬が吸収されますので、例えば薬の効きがいまいちだ、という場合は内服後30分より多く時間を置くことで効果を強められる可能性があります。

 ですので、ライフスタイルによってはこの薬を毎日飲むのは難しいという人もいらっしゃり、飲み方を説明したとたん「私には無理」とおっしゃる方もいらっしゃいます。明らかに難しいと思われれば無理に開始することはないのですが、自信がなくても試しにやってみたら意外とできた、という患者さんも多くいらっしゃいます。

 私は外来で、リベルサス®をうまく内服できている方に「薬は家のどこに置いているか」「30分間どのように過ごしているか」を必ず伺うようにしています。前者は、大体寝室かリビングの目につくところに置いて、朝目覚めたら視界に入るようにしている、という方が大多数で、人数的にもほぼ半々です。後者は様々で、テレビや新聞、PCやスマホで時間をつぶす方、身支度にあてる方、朝シャワーに入るのでそれで時間が過ぎる方、家事を行う方、あるいは内服後寝てしまっても構わないので、二度寝して起きたら時間が過ぎている、という方、いろいろな方がいらっしゃいます。

 余談ですが、GLP-1受容体作動薬は上述のメカニズムによる体重減少が期待できるため、以前紹介したSGLT2阻害薬と同様、一部の自由診療クリニックなどで若年女性などをターゲットに、糖尿病ではないがダイエットをしたい、という方に向けて自費で処方されているようです。しかし、これまで述べてきたような注意点に留意し、処方に精通した医師が慎重に投与すべき薬と考えますので、私はあまり好ましくないことだと考えています。ただ、現状未発売ではあるものの、「糖尿病ではない、しかし肥満による合併症(高血圧症、脂質異常症など)を有する患者さん」でも保険で使えるGLP-1受容体作動薬の発売が近々予定されています。使用する患者さんは適切に選ぶ必要がありますが、糖尿病のない患者さんでもGLP-1受容体作動薬による体重減少の恩恵を受けられる時代が近づいています。

「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」では

 毎回出している「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を見ると、GLP-1受容体作動薬は、肥満・非肥満によって薬物選択の優先順位が大きく異なることがわかります。

 肥満を合併する、インスリン(血糖値を下げるホルモン)は潤沢に出ているが、それがうまく効いていない「インスリン抵抗性」が想定される患者さんでは優先順位第3位、肥満のない、インスリンを自前で作る力がもともと体質的に弱い「インスリン分泌不全」が想定される患者さんでは優先順位は下位、下から2番目となっています。体重減少が期待できるため、肥満のある患者さんには優先的に投与を検討するのですが、これ以上減量の必要のない、投与によってかえってやせすぎとなってしまう懸念のある患者さんにおいては優先順位が低くなります。

「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」では

GLP-1受容体作動薬のさらなるメリット

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療のために作られた薬なのですが、近年の研究で心臓・腎臓を傷めてしまった患者さんに大きな利益をもたらされることが実証されており、上図にもある通り、最近では心血管疾患・慢性腎臓病を患っている患者さんにGLP-1受容体作動薬を投与しましょう、という動きが加速しています。

GLP-1受容体作動薬のさらなるメリット

https://dm-rg.net/news/2016/06/017733.htmlより

 上図はGLP-1受容体作動薬を投与した人、そうでなかった人の心臓病の発生率を比べた研究なのですが、青色の線の「リラグルチド群」と書かれた、GLP-1受容体作動薬を投与した人達において、心臓病の発生率が内服後1年、2年・・・と経過するにつれてどんどん下がっていき差がついていることが伺えます。

まとめ

  • *GLP-1受容体作動薬は、食後のインスリン分泌を促進することで血糖値を下げる
    *食欲を抑制し、体重減少がもたらされることもあり、肥満合併の患者さんに優先的に投与される
    *週1回の注射薬、毎日の内服薬があり、内服薬は飲み方に注意が必要。ライフスタイルによって使い分けを行う
    *血糖降下作用のみならず、心臓・腎臓といった、特に高齢者で機能低下を起こしやすい内臓に非常に良い効果をもたらされることが実証されている

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