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糖尿病の食事療法について

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

 

今回から何回かに分けて糖尿病の治療について解説していきたいと思いますが、今回はまず「食事療法」を取り上げたいと思います。

糖尿病治療の根幹としての食事・運動療法

糖尿病の治療というと、もしかするとお薬をイメージする人が多いかもしれません。「ずっと薬を飲まないといけないと聞く」「飲み薬だけでなく注射をしている知人もいる」といったことを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうか。

 

非常に重要なことですが、糖尿病治療の根幹は食事・運動療法です。「食事・運動療法を実施するも思うような改善が得られない」「どうしても不十分な食事・運動療法しか実践できない」といったケースで、補助的に薬を併用する、という考えが主流です。薬を使っているんだから食事・運動療法はおざなりでよい、という考え方は好ましくありませんし、良好な治療効果は得られにくいと考えられています。

1日の摂取カロリーの設定:まずは理想体重の把握

糖尿病の食事療法に際してまず考えることは、「1日の合計摂取カロリーをどれくらいにするか」ということです。これには計算式があり、(理想体重kg)×(その方の活動量に応じた数字)、で計算します。

 

BMIという言葉を聞いたことがあるでしょうか。健康診断などで必ず表示されますので、目にしたことのある人も多いかもしれません。BMIは、(体重kg)÷(身長m)÷(身長m)、で計算される肥満度の指標で、例えば身長160cm、体重60kgの方であれば、BMI60÷1.6÷1.6=23.4、となります。

 

65歳未満の方では、BMI=22が理想体重とされており、それを用いて、身長160cmの方の理想体重は、1.6×1.6×22=56kg、と計算することができます。

 

65歳以上の方では、やせすぎは逆に良くない、という考えで、BMIは22~25が望ましい、とやや甘めに設定されています。ですから、身長160cmの方の理想体重は、65歳以上ですと、1.6×1.6×(22~25)=56~64kg、と少し幅広くなります。

1日の摂取カロリーの設定:その方の活動量に応じた係数をかける

さて、理想体重はわかりましたので、次はその理想体重に「その方の活動量に応じた係数をかける」ことで、1日の摂取カロリーを設定することができます。

 

「活動量に応じた係数」とは具体的に以下のように設定しています。

 

1日の大部分を座って過ごすなどあまり動かない方 係数:2530

・通勤、家事、買い物などはするが、座って過ごすことも多い方 係数:3035

・力仕事、活発な運動などで日々体を動かしている方 係数:3540

 

例えば「身長150cmの、足腰が悪く1日の大半を家で座って過ごす80歳の女性」であれば、1日の摂取カロリーは1.5×1.5×2225=4956kgが理想体重、それに2530をかけますので、大体1日あたり13001600kcal程度となります。

 

また、「身長170cmの、デスクワークメインの50歳の男性」であれば、1日の摂取カロリーは1.7×1.7×22=64kgが理想体重、それに3035をかけますので、大体1日あたり19002200kcal程度となります。肥満傾向でダイエットが必要であれば1900kcalに近づくように、やせ型であれば2200kcal程度摂ってもOK、といったところでしょうか。

 

もう一つ重要なこととして、前回のブログでも書きましたが、少し食べ過ぎてしまった・自分へのご褒美で甘い物を食べた、ということがあっても、大まかにこの摂取カロリーの範囲内で帳尻を合わせれば問題ありませんので、「糖尿病なんだからこの食べ物を食べてはいけない」といったことはなく、習慣化したり、過剰にならなければ許容されることが多い、とお考えいただきたいと思います。

その他:三大栄養素のバランス、脂質の種類、アルコール・塩分摂取量

炭水化物・タンパク質・脂質を三大栄養素と呼びますが、摂取カロリーも主にその3つから成り立ちます。一般的に、エネルギー摂取量の4060%を炭水化物、タンパク質は20%以下、残りを脂質、とします。「ロカボ」と呼ばれる糖質制限・低炭水化物食がブームとなっていますが、過度の糖質制限はこれらのバランスを崩してしまいますので、減らすと言っても40%程度、例えば12000kcalが目標なら最低でも800kcal程度は摂取するようにしましょう。

 

また、脂質は「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は肉・牛乳・バター・卵黄・チョコレート・ココアバター・ココナッツ油、トランス脂肪酸はマーガリン、不飽和脂肪酸はオリーブオイル・菜種油・アボカド・魚油・トウモロコシ油・大豆油・サラダ油等・クルミ・えごまに多く含まれます。このうち、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸は過剰摂取により動脈硬化リスクを上昇させることが知られており、不飽和脂肪酸の割合を増やすことが重要とされています。スーパーでの買い物の際など、意識してみてもいいかもしれません。

 

また、アルコール摂取は125g以下(缶ビール500ml程度) 、高血圧のある方では食塩摂取量は16g以下が望ましいとされています。

その他:三大栄養素のバランス、脂質の種類、アルコール・塩分摂取量

(https://medicalnote.jp/contents/191213-002-OLより。可食部100gあたりの含有量)

食品交換表・栄養相談の活用

さて、糖尿病患者さんの食事療法の概要について述べてきましたが、「数字はわかるが実際どうすればいいかわからない」「カロリーや塩分制限について、日常生活での工夫について知りたい」などとお考えになられた方もいらっしゃると思います。そこで、食品交換表・栄養相談を是非活用していただきたいと思います

 

「食品交換表」とは、日本糖尿病協会が出版している、食品の種類ごとに1日の摂取量の目安、あるいは、この食べ物とこの食べ物は大体この量なら同じくらいのカロリー、というような内容を、カラフルな図解や写真を豊富にそろえて解説している本です。医療従事者はもちろん、一般の方が読んでもわかりやすく書いてありますので、ぜひ具体的な食事療法の指針として役立ててみて下さい。

 

また、当院は平日午後不定期に、管理栄養士による「栄養相談」の機会を設けています。医師は病気や薬の知識は有していますが、食事療法の工夫・改善点については管理栄養士がその道のプロですから、医師による診察では聞くことのできない細やかな内容について、時間をとりマンツーマンでじっくりお話しすることができます。自炊される方は調理法などについて、外食や惣菜がメインという方も品目の選び方など、おひとりおひとりのライフスタイルに合った提案ができると思います。平日午後にお時間をお取りできる方は是非受けてみて下さい。

食品交換表・栄養相談の活用

まとめ

  • * 糖尿病治療の根幹は薬ではなく食事・運動療法である。
  • * 1日の摂取カロリーは、理想体重と、その方の活動量に応じ計算して決める。
  • * 三大栄養素のバランス、脂質の種類、アルコール・塩分摂取量なども留意することが重要である。
  • * 具体的な品目の選び方、摂取法の工夫については、日本糖尿病協会出版の「食品交換表」や、当院で管理栄養士により行われている「栄養相談」を活用することができる。

糖尿病専門外来のページはこちらです。


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