皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。
2020年度最初のブログは、新任常勤医で消化器内科の川上智寛先生の紹介です。彼は私と医師歴が同期で、以前同じ病院で内視鏡検査をしていました。内視鏡の腕が非常に良いことと、とにかく温厚な人柄が魅力で、専門は私と同じ炎症性腸疾患です。今回は、新任の挨拶と、炎症性腸疾患についての説明を依頼しました。
ご挨拶
皆様はじめましてこんにちは。
2020年4月から小金井つるかめクリニックでお世話になります、消化器内科の川上智寛と申します。杏林大学を卒業し、順天堂大学浦安病院で初期臨床研修を行い、そのまま大学病院で消化器内科として勤務しておりました。
順天堂大学浦安病院は大学病院であるものの地域密着の病院であり、一般的な症例から難治例まで幅広く外来診療、入院治療に携わることができました。
専門は「消化管病変の診断・内視鏡治療」「炎症性腸疾患」です。
2018年度の時点で年間7,500件を超える内視鏡検査を行っている当院でも「優しく・丁寧に、そして正確に」をモットーに診療してまいりますので、皆様何卒よろしくお願いいたします。
皆様に“炎症性腸疾患のうち潰瘍性大腸炎“についてお話します。
炎症性腸疾患とは
腸に炎症を伴う病気を広い意味では炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)といいます。そういう意味では細菌やウイルスや薬剤性の腸炎もIBDに分類されますが、一般にIBDといえば「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」を指すことが多いです。
潰瘍性大腸炎とは
大腸の粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の慢性の炎症性疾患です。免疫の異常が原因であると考えられていますが、現在でも明確な原因は不明です。
多くみられる症状は下痢・軟便や血便、腹痛などです。軽症であれば1日4回以下ですが、重症になると1日6回以上になり、発熱もみられます。多い方では1日10-15回以上の排便回数になり、夜間も十分な睡眠がとれず、いつもトイレの場所が気になり、日常生活に支障をきたすようになってきます。
<診断>
1、 問診
発症当初は細菌やウイルスなどによる「胃腸炎」との鑑別が難しいため症状の経過がキーポイントになります。
2、 採血・便培養検査
採血で炎症の程度や貧血の度合い、栄養状態などを把握します。細菌による腸炎を否定するために便の培養検査を行います。
3、 大腸カメラ
内視鏡で炎症の広がりや状態、潰瘍性大腸炎に特徴的な所見があるかを確認します。組織の検査(病理検査)を行います。
1〜3を総合的に判断し、潰瘍性大腸炎と診断することになります。
出典:厚生労働省 難病情報センター
潰瘍性大腸炎は国の定める指定難病の一つであるので、難病法に基づく医療費助成の対象になります。軽症の方で難病の申請を行っていない方もいらっしゃると思いますので全数把握は難しいですが、受給者証交付件数で大まかに把握することできます。グラフに示す通り、年々患者数は増加傾向が見られます。潰瘍性大腸炎は指定難病の中で最も患者数が多い病気になっています。
出典:厚生労働省 難病情報センター
発症のピークは20代ですが、40-50代の方の割合も多く、どの年代でも発症しうる病気です。若いときから「おなかが弱い」「なんだか下痢っぽい感じが続く」など軽い症状があった方であるとき急激に症状が悪化して診断となるケースも多いように感じます。
重症度
出典:厚生労働省 難病情報センター
重症度については、軽症が最も多く63%、続いて中等症が27%、重症が3.4%で劇症は僅か0.3%程度です。重症や劇症は入院治療が必要になるケースが多いですが、軽症〜中等症の方は外来通院で治療を開始し、これまで通りの日常生活を継続することが可能です。
潰瘍性大腸炎は再燃寛解(良くなったり、悪くなったり)を繰り返す病気であり、適切な治療介入で良い状態を長く継続して維持していくことが治療の基本になります。
残念ながら現在の医学でも完治できるお薬はありませんが、年々新規の薬剤が登場している領域であり、多くの方が潰瘍性大腸炎と診断されたあとも日常に不安なく過ごすことができるようになってきています。
治療についてはまたの機会にお話させていただきます。
まとめ
* 指定難病の一つである潰瘍性大腸炎は近年患者数が増加している。
* 新規の薬剤が登場している病気で軽症~中等症の方は外来通院でコントロールが可能。