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早期肺癌の治療方針について

 皆さまこんにちは。小金井つるかめクリニック院長の田中真人です。

 コロナ禍で迎える3回目の夏ですが、皆様お変わりありませんか?今回は早期肺癌の治療方針についてお話させていただきます。

 

 前回のブログでは早期肺癌の特徴について説明致しました。要約すると、早期肺癌の多くは高分化型腺癌の一種である気管支肺胞上皮癌で、直径が1cm以内、リンパ節を含めた全身の臓器に転移が認められないステージ0期及びIA1期の方が該当します。

 現在、これらに該当する患者さんに対して、①手術による根治術、②当面の間は経過観察のみ、と2通りの治療方針がとられることが多いです。しかし、早期肺癌、特に肺野型(あとで説明します)の診断が術前に下されることは殆どないため、全身麻酔下による手術で根治術が行われる際に、肺に針を刺すか部分切除を行い、採取された肺組織を病理検査に提出します。

 20分くらい手術を中断して待機していると病理検査の結果がでますので、早期肺癌の診断がついたら全身麻酔を継続して肺癌の根治術が行われます。もし肺癌以外の診断がついたらこの時点で手術は終了です。

 

  • 1) 手術による根治術

 

 私が研修医になった頃の肺癌の手術は背中から側胸部にかけて30~40cmほどの大きな切開創をおき、肋骨を1、2本切除してから金属製の開胸器を肋骨の間にかけて術創を広げ、術者の両手はもちろん、第1助手の片手までも同時に患者さんの胸腔にはいるとても大きな開胸創で行われていました。手術時間も長く、出血量もかさみましたし、患者さんの術後の痛みの訴えは非常に強く、おまけに鎮痛剤の効果は弱く、当時研修医の私はその対応に苦慮したことを思い出します。術後の入院期間も2~3週間程度で、患者さんの体力と気力がともに回復するには半年くらいかかりました。画像は会津中央病院のホームページを参考にさせていただいた図解です(人の体を右横から見た構図です)。5番目または6番目の肋骨に沿って皮膚や筋肉が切開されていました。

早期肺癌とは

 しかし、海外で胸腔鏡手術が開発され、1990年代に日本へ導入されてから肺癌の術式は大きく変化しました。いかに小さな創で安全に手術ができ、どれだけ術後の痛みを減らせるか、という流れになってきました。開胸や閉胸に要する手術操作が減り、胸壁の筋肉の切開量が圧倒的に減ったため、手術時間、出血量、そして術後の痛みも格段に減りました。今では第1助手をロボットが務めることもあり、この30年間の手術の進歩は隔世の感があります。手術創は数センチ以下のものが数個で済み、術後数日で退院可能となっています。

早期肺癌とは

 早期肺癌の方に対する手術は殆どの方にロボット手術を含めた胸腔鏡手術が行われていますが、切除する肺の大きさは肺癌のある部位によって異なります。肺癌はその発生部位により、肺の中の太い気管支に発生する肺門型(ⅰ)と肺の奥の方に発生する肺野型(末梢型)(ⅱ)に分類されます。参考までに肺門型(左)と肺野型肺癌(右)のCT画像をお示しします。

 左のCTでは濃淡のあるすりガラス様の病変が気管支(黒く抜けた枝分かれ部分)に浸潤していますが、右のCT画像では中央やや上の淡い円形病変近くに存在するのは細く白い血管だけです。

(ⅰ)肺門型早期肺癌に対する手術

 

 肺門型の肺癌では、その近くに太い肺動脈や肺静脈(心臓と直結して全身を循環する血液が流れています)が走行しているため、それらの血管を損傷しないように肺癌の病変部位だけをくりぬくような手術では肺癌がごくわずかでも取り残される可能性があります。折角肺癌が早期に見つかったのに、これでは数年後に肺癌が再発してしまい、再び治療を受ける必要がでてきます。このため、肺門型の肺癌では早期肺癌でも肺葉切除となることが多いです。前回お話致しましたが、右肺は3つ、左肺は2つの袋(肺葉)に分かれているので、計5種類の肺葉切除術のいずれかが選択されます。

 

(ⅱ)肺野型早期肺癌に対する手術

 肺野型の肺癌では病変の近くを走行するのは細い気管支、肺動脈や肺静脈なので、自動縫合器で肺実質が切除されても殆ど出血せず、空気も漏れません。このため、肺癌から距離を離したうえで、健常な肺を含めた部分切除または区域切除(肺葉切除に準じて少し太い気管支や肺動脈及び肺静脈を処理しますが、切除肺の量は肺葉切除より小さく済みます)で根治的な切除が可能となります。また、先程お話させていただきましたが、早期肺癌の診断をつけるための肺部分切除術=根治術となることも多々あります。

 このように、肺癌が生じた部位によって根治術式は大きく左右されるのです。

  • 2) 経過観察

 その一方で、肺癌の根治術が行われず、肺癌の確定診断も下されぬままに経過観察される患者さんもおられます。画像上はほぼ間違いなく早期肺癌が考えられますが、大きさが数ミリ大につき確定診断をつけるための病理検査、つまり全身麻酔下で肺の組織をとって根治手術を受けてもらう必要が現時点ではない、と判断されたケースの方がこれに該当します。

 CTですりガラス様病変(GGO)の内部が均一に淡い方は、早期肺癌よりも非定型腺腫様過形成(AAH)が考えられますが、病変内部に濃い成分が出現してきたら一部が腺癌へ変化している可能性があり要注意です。また、全て淡い病変(いわゆるpure GGO)でAAHが疑われる方でも、直径が1.0cmくらいまで大きくなってきたら手術切除を検討されるのが望まれます。担当医によっては1.5cmまで経過観察をお勧めすることもありますが、いずれにせよ半年~1年毎に定期的なCTフォローは必要です。




呼吸器内科のページはこちらです。

まとめ

*早期肺癌の治療方針には根治手術と経過観察の2通りがある。

*根治手術はロボット手術を含めた胸腔鏡手術で安全に行われ、術後の痛みもかなり少なくなったが、切除する肺の容量は肺癌の発生部位に左右される。

*経過観察の場合は専門家による慎重な判断が必要であり、画像で変化が認められたら躊躇うことなく根治手術を受けられることをお勧めします。

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