小金井つるかめクリニックの消化器内科の川上智寛です。
2021年度の内視鏡件数
当院は多摩地区随一の件数の内視鏡検査を行う内視鏡センターを有しております。
内視鏡件数総数は、2020年度 10,813件から2021年度は12,828件と大幅に増加いたしました。10年前と比べて約7.5倍です。2年連続で「1万件」を超えていることをデータでみると、とても沢山の方に当院で検査を受けていただいているのだなと、改めて実感しました。
この件数の多さは皆さんからの当院への期待の大きさの表れなのだと思います。
気を引き締めて、今後も日々の内視鏡診療を行わせていただこうと思います。
昨年度の月別内視鏡件数を示します。
大腸カメラはほぼ毎月件数の変動はありません。
胃カメラは7月~12月までが多い傾向があり、ピークは10月です。
例年同様の傾向がみられ、健診受診者が多い時期と合致します。
「健診を受けたいけれど、いつにしよう?」と思っている方で10月前後を予定している場合、早めにお問い合わせいただいた方がご希望に沿った日程でご案内できると思いますので、是非ご検討ください!内視鏡件数の報告を今回したので“胃がん検診”についてお話しようと思います。
日本のがん検診は「対策型検診」と「任意型検診」があります。
検診は無症状の方を対象に行うものです(症状がある場合は外来での保険診療になります。)
・胃がんの場合
|
対策型検診 |
任意型検診 |
目的 |
対象集団の死亡率を下げる 例)自治体が実施する住民検診 職域検診 など |
個人の死亡リスクを下げる 例)個人が受ける人間ドックなど |
対象者 |
50歳以上 ※胃X線検査は40歳以上 |
希望者 |
受診間隔 |
2年に1回 ※胃X線検査は1年1回 |
希望者 |
検査方法 |
胃X線検査 or 胃内視鏡検査 |
胃X線検査 or 胃内視鏡検査 |
費用 |
公的資金で無料 or 一部負担 |
全額自己負担(一部職場による補助) |
日本では対策型の胃がん検診として胃X線検査、いわゆるバリウム検査が実施されています。バリウム検査は長年広く実施されている検査であり、検査可能施設も多く、費用も内視鏡に比べて安価です。死亡率減少効果も確認されています。
一方、内視鏡検診については2014年度の国立がん研究センター「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」で示されている通り、内視鏡検診の死亡率減少効果が確認され、2016年の厚生労働省の指針改定で内視鏡検査が認められたことで実施可能となりました。
2014年度の国立がん研究センターのガイドラインによると、これまで実施された症例対照研究やコホート研究から内視鏡検診で胃がん死は23-71%程度に抑制され、胃X線検査と比較して死亡率は23-33%に抑制されるとなっています。
つまり、「内視鏡検診の方がX線検診より抑制効果が優れている」ということがわかったので対策型の胃がん検診として認められたということです。
では、「なんで全部胃カメラにしないの?」となると思いますが、理由はいろいろあって…。地域により内視鏡施行医師・スタッフの数が十分でないこと、1件あたりの検査費用が高く自治体によっては導入が難しいこと、胃カメラ検査に伴う偶発症もあり総合的に考えて導入に至っていないこと、等が挙げられます。
小金井市では2020年から、近隣の府中市は2021年から内視鏡による胃がん検診が実施されています。当院ではどちらの自治体からも受け入れをしています。「血液をサラサラにする薬を飲んでいないこと」「胃に病気がないこと」が条件になっていたり、住民検診として受ける場合は原則として鎮静剤や鎮痛剤の使用が認められなかったりします。自治体によって条件に違いがありますので、自治体のルールをご確認の上、制度を利用できるかどうか一度ご検討ください。
また、自治体による住民検診で胃カメラができない場合でも個人の人間ドックの検査は受けられますので、「症状はないけど、一度調べておきたいな」という方は胃カメラを受けてみてはいかがでしょうか?