好酸球性食道炎という概念 ~後編(学会と論文の報告)~

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好酸球性食道炎という概念 ~後編(学会と論文の報告)~

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は前回の内容の続きで、好酸球性食道炎に関する研究成果の学会発表と論文投稿の報告を致します。

 

なお、本ブログのコンセプトは「最新の医療ネタを分かりやすく解説する」ためのものですが、専門用語が数多く含まれます。医療関係者の方でなくとも理解できるように努めてはいますが、用語が多少難解であったり、そもそも扱うテーマが非常にマニアックです。この点をご容赦いただけますと幸いです。

 

 

無症候性食道好酸球症と好酸球性食道炎の関係性

 

まず、前回のブログで最後に提示した臨床的疑問(クリニカル・クエスチョン)を再掲します。

 

(1)無症候性食道好酸球症は放置してよいのか?=治療するべきか?

(2)無症候性食道好酸球症は好酸球性食道炎になるのか?

(3)もしなるとすれば、その背景のリスクは何か?

 

私たちは、当クリニックと系列の新宿つるかめクリニックで行なった、70,095例の胃内視鏡検査の結果を解析して、上記クリニカル・クエスチョンに一定の見解を見出しました。

 

70,095例中、無症候性食道好酸球症と診断された方は54例(0.077%)でした。内視鏡の所見や症状の推移を追うことができたのは36例で、内視鏡所見が悪化した方が22例(61.1%)でしたが、そのうち最終的に症状のある好酸球性食道炎になった方は6例(16.7%)でした。

 

最終的に好酸球性食道炎と診断された方のうち、5例は簡単な内服治療のみで症状が消失しましたが、1例はステロイドによる治療が必要でした。

 

また、無症候性食道好酸球症と診断された場合、どのような方が好酸球性食道炎になる可能性が高いのか、統計学的手法で解析を行うと、「年齢が若い方」がリスクであることがわかりました。

 

内視鏡所見や症状の増悪がなかった方が平均52.4歳であったのに対し、好酸球性食道炎になった方は平均44.4歳でした。

 

まとめると、

 

1)無症候性食道好酸球症と診断された場合、一定の頻度で好酸球性食道炎になる可能性があるが、難治性になる可能性は低い

2)年齢が若い方は好酸球性食道炎に進展するリスク(かもしれない)

 

ということです。

 

今後は我々の施設以外からもデータが蓄積され、この見解が正しいかどうかの検証がなされていくことになります。現時点ではまだ結論とは呼べませんのでご注意ください。

 

 

JDDW2019での学会報告

 

2019年11月21日から24日まで神戸で開催された、第27回JDDW(Japan Digestive Disease Week)で、主題演題という大きな場で発表の機会を頂きました。

 

こんな感じで発表しました。最近の学会は英語でのスライド作成が求められることが多く、研究を海外に発信していくべきという学会側の姿勢が反映されているものと考えます。

 

発表の後には、この写真のように同じセッションで発表をした別施設の先生方と総合討論の場があります。

 

 

国際科学誌への投稿

 

本研究は国際科学誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology Open」に論文として受理されました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jgh3.12270

 

Open誌と言って、どなたでも無料で閲覧が可能な雑誌ですので、ご興味をお持ち頂ける方は見てみてください(英語です)。

 

この論文は、私が昨年つるかめ会に赴任してから2本目の論文になります。

 

我々医師が携わる日々の診療や検査の中で最も重要なことは、もちろん皆さんの病を癒すこと、病気を早期発見することです。そして次に重要なことは、日々の診療の中から、クリニカル・クエスチョンを見出し、それに対するアンサーを出し続けることです。

 

それこそが「研究」であり、研究の成果は学会発表や学術論文の投稿によって世の中に還元されていきます。学会発表は大学病院でなくとも熱心に行う先生方は多いですが、より意味のある成果にするには、やはり学術論文の投稿が必須です。

 

私は以前大学病院におり、大学の機能は「臨床」「研究」「教育」の3本柱でしたが、我々のようなクリニックにおいても、「臨床」「研究」に関しては継続可能であることを、今後も証明していきたいと思います。

(いずれは「教育」機能についてもクリニックとして内包できれば、と夢を膨らませています。)

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