GLP-1受容体作動薬をめぐる最近のニュース

 皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

 今回は前回の続きとして高血圧症の薬の話を書こうかと思ったのですが、一風変わった話題として、最近目にした、GLP-1受容体作動薬をめぐるニュースについて取り上げ、私見を述べたいと思います。

ダイエット目的での使用によるトラブル

https://news.yahoo.co.jp/articles/6a659465d2f2f22faca0d14b55d8d64d3d1f9ae1


 GLP-1受容体作動薬は先日記載した通り、主に胃の中の食べ物の消化を遅らせることによる食欲抑制作用を持ちます。そのため、本来の糖尿病治療薬としての目的とは異なり、やせ願望のある主に若い女性をターゲットに自費で処方されることがあります。記事を読むと、SNSでいわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる女性がGLP-1受容体作動薬を使用することでダイエットに成功した、と宣伝し、評判となっているようです。

 私も、糖尿病の数値は既に良くなっておりこれ以上良くしなくて大丈夫だが、是正を要する肥満がある患者さんに対し、「糖尿病の病名があることを逆手にとって減量を目指しGLP-1受容体作動薬を使いましょう」と案内することがあります。ですので、糖尿病の合併がなくとも、肥満の患者さんに限って使用するのであれば必ずしも悪いことばかりではありません。後述しますが、アメリカでは既に糖尿病のない肥満の患者さんにGLP-1受容体作動薬が使用可能となっており、日本でも発売が決定になっています。

 しかし、GLP-1受容体作動薬は胃腸の消化を遅らせるため、吐き気、便秘、下痢などの副作用を伴うケースがあります。少しくらいの吐き気や胃のむかつきであれば「それによる食欲抑制に期待しましょう」と我慢を促すこともありますが、日常生活に支障が出るのであれば中止が望ましいです。記事の中ではきちんとした説明を受けずに気軽にGLP-1受容体作動薬のリベルサス錠を内服したらひどい体調不良に見舞われた、という記載がありますが、おそらく非糖尿病専門医が十分な説明なく処方したものと思われます。また、大柄な患者さんと小柄な患者さんでは薬の効き具合も異なると考えられるため、これは私の勝手な憶測ですが、本来ダイエットが必要ない、肥満とも言えないような方が内服し、薬の効果が肥満の人よりも強く出てしまったのではないか?という可能性もあると思います。

 急性膵炎で入院することになった、という記載もありますが、重い膵炎であれば4日間の入院で済むはずがないので、軽いものか本人の聞き間違いかな、と思います。ただ、GLP-1受容体作動薬の副作用にまれではありますが膵炎は含まれますので、内服後ひどい腹痛に見舞われた場合は膵炎の可能性を考慮する必要があります。

ダイエット目的での使用によるトラブル

GLP-1受容体作動薬が食料品店の売り上げに影響?

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a19db8cee97824b6eb9303ffac4a3a9eb0b1d82

 次はアメリカの話ですが、GLP-1受容体作動薬の使用により、ウォルマートやコストコなどの、食料品の量販店の売り上げが低下しているのでは?という話です。

 先述の通り、アメリカでは「ウゴービ」という、糖尿病のない肥満症の患者さんでも使用できるGLP-1受容体作動薬が発売されています。日本でも発売は決定しているのですが、まだ先のようです。理由は後述しますが、私の患者さんにもアナウンスし複数人興味を持たれている患者さんがいらっしゃり、「あの薬はまだですか?」と聞かれる度申し訳ありません……と返答しています。

 アメリカでは肥満が社会問題化しています。肥満というとさぞお金持ちの人がたらふく食べて太っているのではないか、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、健康によい野菜などを食卓に用意するのは実はお金がかかり、貧しい人が手っ取り早く腹を満たせるジャンクフードを頻繁に摂取し肥満になる、という側面もあるようで、社会格差を反映していると耳にしたことがあります。

 食料品産業に従事される方にとってはうれしくない内容かと思いますが、そこまでの効果があってもおかしくないよな、と感じたニュースでした。

GLP-1受容体作動薬が足りない!

https://news.yahoo.co.jp/articles/4f18da255efb2f3aa1bda169ab1bc4e4a30623ce

 そんなに効果があるなら日本でももっと使用したらいい、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら、日本で今GLP-1受容体作動薬不足が深刻化しています。具体的には、週1回注射薬のオゼンピック・トルリシティ・マンジャロの不足が著しいです。内服薬のリベルサスについては比較的流通が保たれているようです。また、糖尿病治療薬ではありませんが、コロナやインフルエンザ、その他風邪の流行に伴ってか、咳止めなどの風邪薬も深刻な不足状態となっているようです。

 原因としてオフィシャルに発表されているものとしては「増大する需要に生産が追いつかない」ということのようですが、特にマンジャロについては発売して早々に欠品・限定出荷という有様であり、そんなに見通しが甘かったのか!?と思わずにはいられませんでした。「こんないい薬が出たんですよ、早く使えるといいですね」と患者さんに説明していたのに思うように使用することができず、残念な思いをされている方が多くいらっしゃることでしょう。オゼンピックとウゴービは成分が共通ですので、先述の、糖尿病のない患者さんにも使えるGLP-1受容体作動薬であるウゴービの発売はまだ先でしょう。

 

GLP-1受容体作動薬が足りない!

https://dm-rg.net/news/7d948848-6c56-4257-b9d0-ef507a63f336 より

 

 ご覧の通り、マンジャロは2.5mg, 5mg, 7.5mg, 10mg, 12.5mg, 15mg6規格あるのですが、現在日本に流通しているのはほぼ2.5mg, 5mgのみであり、私の患者さんでも7.5mg以上に増量してさらなる効果を実感したいのにそれができない……という方が多くいらっしゃいます。

 記事内でも言及されていますが、GLP-1受容体作動薬の不足にはあと2つ理由があるのではないかと思われます。一つは先述の通り美容外科で使用されており、保険診療へ回ってこなくなっているという可能性です。ただ、これは数としては少量であり、大きな影響ではなさそうです。もう一つが大きな理由かと思いますが、海外で多く消費されており、日本にまで入ってこないという可能性です。GLP-1受容体作動薬を作っているのは外資系の会社で、おのずと肥満・糖尿病・心血管病が社会問題となっている欧米に多く出荷されるのかもしれません。また、お金の話で恐縮ですが、日本は薬価が安く抑えられており、同じように出荷するのでも日本より欧米の方が会社の儲けが大きくなるのではないか、と唱えている人もいます。国力の差を感じさせられるようですが、これら諸々の要因で我々日本人はGLP-1受容体作動薬の恩恵にあずかりにくくなっており、その傾向は今後もしばらく続くものと思われます。

まとめ

  • *ダイエット目的のGLP-1受容体作動薬使用により、思わぬトラブルが発生することがある
    *欧米では食料品店の売り上げへの影響が懸念されるほどGLP-1受容体作動薬が一般的に使用されている
    *一方、日本では残念ながら諸般の事情により出荷制限の状況が続いている

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