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高血圧症について(その1)

 皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

 本題とは関係ありませんが、10月より副院長の職を拝命いたしました。今後とも地域の皆様の健康増進に寄与すべく邁進してまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は高血圧症の話を取り上げます。

血圧の管理目標値について

 健康診断などで血圧が高い、あるいは家で血圧を測って高い、ということで多くの患者さんが受診されます。そもそも、血圧のどのくらいの数値に保っておけばよいのでしょうか。

血圧の管理目標値について

https://dm-rg.net/contents/practice_qa/c6116f58-1930-4893-a743-275ed4222a36より

 家で測った血圧か、病院で測った血圧か、あるいは年齢・持病の有無にもよるのですが、75歳未満は病院だと130、家だと125を超えたら高い、75歳以上は病院だと140、家だと135を超えたら高いと思ってください。基準値が2019年に改訂され、2014年の基準より厳しくなりましたが、これは血圧をしっかり下げた方が動脈硬化による病気を予防できるという知見が得られたためです。

 病院で測ると高いが家で測ると正常、いわゆる「白衣高血圧」と呼ばれるパターンや、逆に病院だと正常だが、家で測ると高いという「仮面高血圧」と呼ばれるパターンの方もいらっしゃいます。ですので、院内血圧だけで判断せず、きちんと血圧計(手首式のものではなく上腕式、二の腕に巻くタイプのものがお勧めです)を購入し、家庭で血圧を測定することが重要です。

 この管理目標値ですが、残念ながら達成率はかなり低いのが現状で、特に若い人において不十分なようです。

Asayama K, et al. J Hypertens 2019; 37: 652-3より作図

 

 要因としてはいくつか考えられますが、「医師が血圧管理目標値を把握していない」「患者さんが血圧の薬の増量を嫌がる」などが考えられます。これを「Clinical inertia」、直訳すると「臨床的惰性」と呼びます。私はいつも診察室で、血圧の数値はこのくらいまで落とさなければならないと目標値が決まっている、どうせ通院するなら・どうせ1錠薬を飲むならきちんと効いて目標値を達成できるものを飲みましょう、と口を酸っぱくして言うようにしています。最近は1錠の中に複数の成分を混ぜ込ませた、「合剤」と呼ばれる薬も登場していますので、薬の錠数が増えるのは嫌だな、という方でも負担が少ない形で治療強化を図ることができます。

血圧を薬に頼らず下げるには

 さて、血圧が高いから下げなくてはいけない、しかしできれば薬には頼りたくないな、と考える方も多いと思います。私はまず「減塩・禁煙・節酒」と呪文のように唱えて説明しています。

 禁煙は言わずもがな重要です。喫煙による血圧上昇の他、そもそも動脈硬化を進める原因になります。結局はご本人の意思次第ではあるのですが、意思はあるもののなかなか・・・という場合は当院の禁煙外来をご活用ください

 節酒について、「禁酒」としていないのは、適量であれば問題ないためです。アルコール量換算で男性は125g、女性は120g程度が適量と言われています。前者が缶ビール500ml、後者が缶ビール350ml程度に相当します。また、飲酒は血管を広げ、一時的に血圧を下げることがあります。飲酒後に血圧を測定すると低くなる方もおり、そのような方には「飲酒するとわかっている日はその日の降圧薬の量を調節して、下がりすぎないようにしましょう」とお話しすることもあります。

 最後に減塩についてです。日本人は汁物、漬物、保存食などを好んで食べる民族で、そもそも塩分摂取量が多いことが知られています。高血圧症の場合、1日塩分摂取量の目標は「6g」とされていますが、達成するのは下図のごとくかなり困難です。

血圧を薬に頼らず下げるには

鬼木秀幸, . 血圧 2013: 20; 626-9 より

 

 病院食などで減塩食を召し上がった経験のある方は異口同音に「味が薄くて食べた気がしない」とおっしゃいます。しかし、非常に興味深いことに、減塩食を召し上がっている患者さんの体重を見てみると、11㎏くらいのペースで驚異的に減っていくことがあります。これはなぜかというと、仮に114gくらい塩分を摂取していた場合、体は同じように114gくらい尿から塩分を排泄しようとします。ここで16gの減塩食に切り替えた場合、摂取する塩分は6gに減りますが、体は今まで通り14gの塩分を排泄しようとしますので、14-6=8gの塩分が尿に乗せられて体から逃げていきます。そのため、塩分と同時に余分な水分も体から逃げていくため、体重がどんどん減っていくのです。

 しょっぱいものが好きな人は足がむくんでいるケースがありますが、これは塩分をとりすぎると、それを薄めようと体の中に余分な水分がたまる傾向になるためです。私は高血圧症の患者さんの診察をする際に足のむくみをチェックするようにしていますが、むくみがあった場合は余分な塩分と水分が体にたまっているんだろうな、減塩、あるいは余分な塩分・水分を体から出すような薬を使うとより効果的なんだろうな、と考え患者さんにもそのように説明しています。

 参考までに、色々な食品に含まれる塩分量を示します。食事のたびに塩分の量を気にしていると息が詰まってしまいますが、まずは「麺類の汁を今までは飲んでいたけどやめておこう」「味噌汁は具だけ食べて、漬物はもったいないけど残しておこう」「味付けはレモンや酢を使って、少しでも塩や醤油を減らそう」といったように、少しずつできる範囲で減塩に取り組まれるとよいと思います。

 高血圧症の薬物療法については次回取り上げようと思います。

まとめ

  • *年齢、持病ごとに血圧の目標値は異なり、病院と家庭でも異なるため、家庭血圧の測定が重要である
    *血圧を下げるためにはまずは「減塩・禁煙・節酒」が重要
    *日本人は塩分を多く摂る民族であり減塩は難しいことが多いが、まずはできる範囲

糖尿病代謝内科のページはこちらです。


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