IL-23 p19モノクローナル抗体製剤~ミリキズマブ(オンボー®)とリサンキズマブ(スキリージ®)について~

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IL-23 p19モノクローナル抗体製剤~ミリキズマブ(オンボー®)とリサンキズマブ(スキリージ®)について~

小金井つるかめクリニックの川上智寛です。

今回はミリキズマブとリサンキズマブについてお話します。

 

ミリキズマブとリサンキズマブは、インターロイキン-23IL-23)のp19サブユニットを標的とするモノクローナル抗体です。

 

IL-23は、免疫系の細胞(特にヘルパーT細胞のうちTh17細胞)を活性化し、炎症を引き起こします。Th17細胞は炎症反応や免疫防御に関与しており、特に細菌や真菌の排除に重要な役割を担っています。ミリキズマブとリサンキズマブはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、IL-23の働きをブロックすることで過剰な免疫反応や炎症を抑える効果があります。

これら2剤は同じ作用機序を有していますが、適応症や投与スケジュールが異なります。

ミリキズマブ(商品名: オンボー)

  • 【適応症】
    中等度から重度の潰瘍性大腸炎

    【投与スケジュール】

    寛解導入療法では初回・4週後・8週後に300 mgを点滴静注(30分以上かけて点滴)。

    寛解維持療法では点滴静注療法を4週間隔で3回投与した後、4週間隔で1200 mgの皮下注。

    ※維持療法中に効果減弱した場合は点滴静注製剤(300 mg)を4週間隔で3回投与する再導入療法が認められています。

ミリキズマブ(商品名: オンボー)

ミリキズマブの皮下注射はシリンジとオートインジェクターの2タイプがあり、1本が100 mlなので、1回の投与で2本の皮下注射を行います。2024年6月までは自己注射が認められていなかったため医療機関で1か月に1回注射することになっていましたが、このたび自己注射が可能となりました。自己注射の手技を習得いただければ受診間隔をあけることができます。

リサンキズマブ(商品名: スキリージ)

【適応症】

尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症(20193月~)

中等症~重症の活動期クローン病20229月)

掌蹠膿疱症(20235月)

中等症~重症の潰瘍性大腸炎(20246)

 

皮下注射はオートドーザーを採用しています。皮膚に張り付けた機械のボタンを押すと自動的に5分かけて注入する仕掛けになっています。皮下注射の液量が2.4mlと比較的多いため、じっくり注入することで痛みが極力少なくなるような配慮であると思います。

 

【投与スケジュール(クローン病)】

寛解導入療法では初回・4週後・8週後に600 mgを点滴静注(600 mgの場合、1時間以上かけて点滴)。寛解維持療法では点滴静注を4週間隔で3回投与した後、初回投与から12週後に1360 mgの皮下注を行い、以降、8週間隔で1360 mgの皮下注を継続します。

 

寛解維持療法開始から16週以降に効果減弱がみられた場合は1200 mgの点滴静注を単回行うことができます。

リサンキズマブ(商品名: スキリージ)

【投与スケジュール(潰瘍性大腸炎)】

潰瘍性大腸炎に対して適応追加(2024624日付のプレスリリース)。

 

寛解導入療法では初回・4週後・8週後に1200 mgを点滴静注(1200 mgの場合、2時間以上かけて点滴)。寛解維持療法では点滴静注を4週間隔で3回投与した後、初回投与から12週後に1180 mgの皮下注を行い、以降、8週間隔で1180mgの皮下注を継続します。(効果減弱時は1360mgの皮下注を8週間隔で投与可能)。

 

寛解維持療法開始から16週以降に効果減弱がみられた場合は1200 mgの点滴静注を単回行うことができます。

IL-23 p19モノクローナル抗体製剤の副作用について

  • 主な副作用には注射部位の反応(赤み、腫れ、痛み)、頭痛や疲労感、感染症(風邪などの上気道感染症、水虫など)があります。1-5%未満で重篤な感染症やアナフィラキシーなどのアレルギー反応が報告されていますが、IL-23 p19モノクローナル抗体製剤に特有の副作用の報告はありません。

     

    【ウステキヌマブとの違い】

    炎症性腸疾患の領域でウステキヌマブ(ステラーラ®)というIL-12IL-23の両方を抑制する薬剤が先に使用されています。IL-12の主な役割はウイルスや細菌への免疫応答や抗腫瘍効果などがあります。IL-23 p19モノクローナル抗体製剤と似た部分に作用する薬剤ですが、ミリキズマブとリサンキズマブがIL-23のみをブロックする点が異なります。

     

    腸管のバリア機能が障害されたマウスモデルの研究で、大腸炎の発症はIL-12によって引き起こされていますが、慢性的な炎症になるにつれてIL-23に依存した炎症反応に変わっていくことが示されました。発症からの時間経過とともに優位なサイトカインが変化していく可能性が示唆されています。(Eftychi C, et al. Immunity. 2019;51:367-380

     

    尋常性乾癬の領域でウステキヌマブまたは抗TNFα抗体製剤であるアダリムマブに効果不十分な方を対象にリサンキズマブに切り替えた場合、皮膚症状が改善したという報告があります。(Bruce S, et al. J Dermatolog Treat.2022;33:2991-2996

     

    ウステキヌマブと比べてリサンキズマブやミリキズマブがIL-12を抑制しないことで安全面に対してプラスの影響があるのかどうか、慢性化した病態により効果が高いのかどうかは現時点で結論はでていません。乾癬領域の報告にあるように炎症性腸疾患でも他の薬剤からの切り替えでよい効果が得られるとも考えられます。いずれにせよ、治療の選択肢が増えることは病気をより良くコントロールできる可能性が広げるため歓迎されることだと思います。

内視鏡センターのページはこちらです。

まとめ

*IL-23 p19モノクローナル抗体製剤であるミリキズマブ(オンボー®)とリサンキズマブ(スキリージ®)は、炎症性腸疾患の炎症をコントロールする薬剤です。
*副作用として注射部位の反応や感染症などが報告されていますが、重篤な副作用は少ないです。
*炎症が起きてからの時間経過でサイトカインが変化することが示唆されたことで治療戦略に新たな展開をもたらす可能性があり、炎症性腸疾患の治療管理の質を向上させることが期待されます。

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