こんにちは。小金井つるかめクリニック婦人科の田嶋わか奈です。
今回ブログの執筆を担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
私は順天堂大学を卒業後、武蔵野赤十字病院で初期研修を経て、順天堂大学産婦人科に入局しました。大学病院などで研鑽し、その後は多摩地域で産科婦人科診療に携わってきました。
婦人科の医師として、病気を治療することに加えて、女性の生活の質(QOL)を改善することも大切な役割だと考えています。些細な症状でも気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。一緒により良い解決策を見つけていきましょう。
婦人科外来では、不正出血や月経の異常を理由に受診される方が多くいます。例えば、「月経が1週間遅れている」「月経周期が不規則」「月経が予定日より2-3日ずれる」「出血量が多い」「月経と月経の真ん中あたりにいつも少量の出血がある」などの症状や「月経の予定日に出血が始まったが、いつもより量が少なく2週間も続いた」といったケースもあります。
また、子宮がん検診の問診で、不正出血の有無を記入する時、「不正出血なのか月経異常なのかよくわからない出血があった」悩まれている方もいらっしゃいます。
日本では月経以外の性器出血を「不正出血」や「不正性期出血」と呼んでいましたが、最近海外では「異常子宮出血(abnormal uterine bleeding, AUB)」という用語が広く使われるようになっています。日本産科婦人科学会では、異常子宮出血を「経血量、月経周期、月経持続期間、規則性において正常の月経と異なる子宮からの出血」と定義しています。これにより、従来の不正出血に加えて月経異常も含まれるようになりました。
月経は、「約1ヶ月の間隔で自発的に起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」です。
月経周期
正常範囲は24〜38日です。
周期が短く24日以内の時は頻発月経、周期が延長し39日以上の時は希発月経、90日以上出血がない時は無月経といいます。
月経周期の数え方は、前回の月経開始日から次回の月経開始日の前日までの日数で計算します。例えば、最近の月経が8月25日に始まり、その前の月経が7月24日に始まった場合、その周期は32日となります。
婦人科を受診する際に最終月経の初日について尋ねられることが多いと思います。これは、月経周期を把握するだけでなく、ホルモン剤の内服開始日や妊娠週数を計算する際の基準日としても使用されるためです。
月経持続期間
8日以内が正常で、9日以上続くものを過長月経といいます。
規則性
一番短い周期と一番長い周期の差が、7日以下は正常、順調で、8日以上は不順といいます。ただし、年齢により正常範囲は異なり、18-25歳と42-45歳の方は9日以下が正常となります。また、18歳未満、46歳以上では正常日数は示されず、個別に判断することになっています。
経血量
以前は20〜140mlを正常としていましたが、現在は、個人の主観によって、異常に少ないものを過少月経、異常に多いものを過多月経とよんでいます。特に、過多月経は単に出血量が多いだけでなく,月経周期が短く、持続期間が長くなるなど、月経による出血量が増加し,QOL に影響を及ぼすものをいいます。
異常子宮出血には、「月経間期出血」も含まれます。
月経間期出血は、正常な月経と月経の間にみられる出血のことをいいます。日本では、月経間期出血の症状で受診される方は多く、異常子宮出血で受診された方の3割に見られたというデータもあります。
この他、ピルなどのホルモン治療中の予定しない出血も異常子宮出血になります。
下記のような疾患が考えられ、問診・診察・検査などによって診断し、分類します。
P Polyp 子宮内膜ポリープ
A Adenomyosis 子宮腺筋症
L Leiomyoma 子宮筋腫
M Malignancy and hyperplasia 悪性疾患または子宮内膜増殖症
C Coagulopathy 凝固異常
O Ovulatory dysfunction 排卵障害
E Endometrial 子宮内膜機能異常
I Iatrogenic 医原性
N Not otherwise classified その他
International Journal of Gynecology & Obstetrics Volume 113, Issue 1 p. 3-13
疾患の頭文字を取って、PALM-COEIN分類とよんでいます。 PALM(手のひら)とCOIN(硬貨)がイメージされます。
ところで、不正出血は子宮からの出血だけとはかぎりません。
異常子宮出血は子宮からの出血ですので、膣や外陰部、尿道口からの出血は含まれませんが、腟内の異物、外傷、膣炎なども出血の原因になることもあります。
また、異常子宮出血には妊娠関連の出血は含まれていません。月経量がいつもより多いと来院され妊娠初期の流産だった方や、いつもより月経量が少なくて来院され子宮外妊娠の診断に至った方もいらっしゃいました。ですので、異常子宮出血を診断する際には妊娠していないこと確認するため、妊娠検査などが必要になることもあります。
異常子宮出血の原因の多くは良性の疾患ですが、多量の性期出血により重度の貧血をきたしたり、子宮がんなど生命に関わる疾患の症状であったりすることもあります。
異常な出血を経験した場合は、自己判断せず、医療機関での適切な評価を受けることが重要です。