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2019年度の小金井つるかめクリニックの研究成果報告

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は特定のテーマを扱うのではなく、2019年度の研究活動の総括をしたいと思います。2020年度に向けての展望などについてもお話をします。

 

 

2019年度に扱った研究テーマ

 

当院は多摩地区随一の件数の内視鏡検査を行う内視鏡センターを有しており、系列の新宿つるかめクリニックの消化器病センターと合わせると、年間35,000件以上の内視鏡検査を行っています。

 

この膨大な件数の内視鏡検査をすべてデータベース化し研究を行っていますが、研究の内容は大きく「後ろ向き観察研究」と「前向き試験」に分かれます。前向き試験はさらに「ランダム化比較試験」と「非ランダム化比較試験」に分かれます。

 

後ろ向き観察研究は、すでに蓄積したデータベースから特定のテーマに沿ったデータを抽出して行うのに対し、前向き試験は、事前に計画を立て観察対象を2群またはそれ以上に分け、一定期間経過後に蓄積したデータを解析するものです。観察対象の分類方法をランダムにしたものがランダム化比較試験、そうでないものが非ランダム化比較試験です。

 

2019年にはこれら3種類(後ろ向き観察研究、ランダム化比較試験、非ランダム化比較試験)それぞれを別々の研究テーマにあてはめて研究を行いましたので一覧にします。

 

  1. 1. 萎縮粘膜に発生する胃底腺型胃癌の特徴に関する研究

 

種別:後ろ向き観察研究

症例(対象):小金井つるかめクリニック、東京医科歯科大学医学部附属病院

学会発表:

消化器内視鏡学会関東支部会(東京、シンポジウム)

消化器病学会総会(金沢、ポスター)

論文化:Ishibashi F, et al. Influence of Helicobacter pylori Infection on Endoscopic Findings of Gastric Adenocarcinoma of the Fundic Gland Type. J Gastric Cancer. 2019 Jun; 19(2): 225-233.

 

2. 胃癌スクリーニング内視鏡検査において病変発見率に寄与する因子の検討

 

種別:後ろ向き観察研究

症例(対象):小金井つるかめクリニック

学会発表:

消化器病学会総会(金沢、パネルディスカッション)

消化器内視鏡学会総会(東京、パネルディスカッション)

消化器癌検診学会総会(岡山、シンポジウム)

論文化:Ishibashi F, et al. Quality Indicators for Detection of Helicobacter Pylori Negative Early Gastric Cancer: A Retrospective Observation Study. Clin Endosc. 2020 Mar. Epub ahead of print.

 

3. 無症候性食道好酸球症の好酸球性食道炎への進展リスクに関する検討

 

種別:後ろ向き観察研究

症例(対象):小金井つるかめクリニック、新宿つるかめクリニック

学会発表:

消化器内視鏡学会総会(東京、ワークショップ)

JDDW2019(日本消化器病週間2019)(神戸、パネルディスカッション)

UEGW2019(欧州消化器病週間2019)(バルセロナ、Oral presentation)

論文化:Ishibashi F, et al. The Risk of Progression to Eosinophilic Esophagitis in Patients with Asymptomatic Esophageal Eosinophilia: A Retrospective Pilot Study. JGHopen. 2019. Oct. Epub ahead of print.

 

4. 大腸内視鏡検査における検査医別成績フィードバックによるADR改善効果の検討

 

種別:非ランダム化比較試験、解析終了

症例(対象):新宿つるかめクリニック

学会発表:

消化器病学会関東支部会(東京、一般口演)

総合健診医学会総会(東京、一般口演)

論文化:現在投稿中

 

5. 大腸内視鏡検査前処置のための超低用量ポリエチレングリコール製剤の有効性に関する研究

 

種別:ランダム化比較試験、解析終了

症例(対象):新宿つるかめクリニック

学会発表:今後予定あり

論文化:現在作成中

 

6. 胃癌検診内視鏡検査の二次読影体制構築によるInterval cancer発見率の変化に関する研究

 

種別:後ろ向き観察研究、解析終了

症例(対象):小金井つるかめクリニック、新宿つるかめクリニック

学会発表:今後予定あり(演題採択済み)

論文化:現在作成中

 

研究成果の総括

 

学会発表:合計12回発表

ポスター発表 2回

一般口演 2回

シンポジウム・ワークショップ・パネルディスカッション 8回

論文:国際科学誌に3本投稿

Journal of Gastric Cancer

Journal of Gastroenterology and Hepatology open

Clinical Endoscopy

 

研究内容に関する簡単な解説

 

  1. 1. 萎縮粘膜に発生する胃底腺型胃癌の特徴に関する研究

 

胃底腺型胃癌というまれなタイプの胃がんがあります。この胃がんは2010年に初めて報告された胃がんで、当初はピロリ菌陰性の胃粘膜に発生するとされていましたが、症例が蓄積されるにつれ、ピロリ菌陽性(除菌後)の胃粘膜にも発生することが分かってきました。

 

あまりに症例数が少ないので、ピロリ菌陰性・陽性(除菌後)の違いが胃底腺型胃癌の見た目にどのような影響を与えるのか、といった視点での研究がありませんでしたので、当院で発見して東京医科歯科大学で治療を行った胃底腺型胃癌8症例を集計して検討を行いました。

 

本研究の結果、ピロリ菌陽性(除菌後)の胃底腺型胃癌では、NBI併用拡大観察という特殊な観察法で見た場合、特徴的な枯れ枝状の微細血管が表面に見える、ということを明らかにしました。

 

 

  1. 2. 胃癌スクリーニング内視鏡検査において病変発見率に寄与する因子の検討

 

胃の内視鏡検査では一定の頻度で胃がんを含めた治療を要する病変が見つかります。こういった病変の発見率は、検査医師や病院間で大きな差があり、検査の精度管理を行う上では、どのような要因が病変の発見率に寄与するのか理解しておく必要があります。

 

以前より、検査時間が短すぎると病変の発見率が低下する、ということが指摘されており、一定以上の時間をかけて検査を行うことが推奨されています。本研究は、「ピロリ菌陰性、陽性、除菌後のいずれにおいても一律に時間をかけて検査をすればよいのか?」という臨床的疑問(Clinical question)をもとに行った研究です。

 

本研究はつい先日Clinical Endoscopyという国際科学誌に論文が受理されましたが。研究内容の詳細について、次回以降ご説明したいと思います。

 

 

  1. 3. 無症候性食道好酸球症の好酸球性食道炎への進展リスクに関する検討

 

好酸球性食道炎という難病があります。好酸球というアレルギーに関連する血球が食道粘膜に浸潤し、嚥下困難感や胸痛などの症状を引き起こす難治疾患で、近年罹患頻度が増加していることが報告されています。

 

一方で、全く症状がないのに内視鏡の見た目や病理像が好酸球性食道炎に類似する無症候性食道好酸球症という概念があります。健診の胃内視鏡検査などで偶発的に診断される機会が増えていますが、そもそも治療対象とするべきか否かも含めて議論が盛んです。

 

我々は、62,250件の胃内視鏡検査を後ろ向きに解析し、37症例(0.059%)の無症候性食道好酸球症の患者さんを抽出、無治療でどのような経過をたどったか追跡したところ、6症例(20.6%)が好酸球性食道炎に進展しましたが、そのうち5症例は非常に軽症で、内服1種類で簡単に治療が可能な症例であることがわかりました。

 

また、無症候性食道好酸球症と診断した時点で「若年者であること」と「病変の範囲が広いこと」が、その後の好酸球性食道炎の進展のリスクであることを明らかにしました。

 

*4〜6の研究内容については、解析は終了しているのですが学会発表及び論文化がまだ済んでおりませんので、最終的に論文が受理された段階で詳細をご説明いたします。

 

 

まとめ(来年度に向けて)

 

2019年度は私が小金井つるかめクリニックに赴任した最初の年でした。当院の理念(=私の信念)は以下の3つで、これらを実践する地ならしの年となりました。

 

・「専門医たる前に内科医たれ、内科医たる前に医療人たれ、医療人たる前に人間たれ」

・Clinical Scienceの実践

・検査は「正しく、はやく、美しく」

 

私の師匠は、東京医科歯科大学消化器内科の前教授の渡辺守先生と、昭和大学横浜市北部病院消化器センター長の工藤進英先生です(と、勝手に思っています)。

 

渡辺守先生は研究に関してはとにかく厳しい先生で、中途半端なデータや臨床的にインパクトを与えられない研究に関してはことさら手厳しく指導して頂いたことを覚えています。特に重視していたのが「Clinical Science」という言葉で、我々臨床家でないと思いつかないこと、実施できないことを題材に研究を行うべきだと仰っており、当院でもそういった「Clinical Science」の実践を行っています。

 

工藤進英先生は、大腸内視鏡の挿入においてレジェンドのような先生です。工藤先生の著書「大腸内視鏡挿入法 軸保持短縮法のすべて」でも述べられているように、大腸内視鏡挿入はartの領域にあるものである、とご指導頂きました。以前昭和大学に内視鏡技術の研鑽のために修行に行った際に、所属するドクター全員にこの考えが浸透していることに衝撃を受けた記憶があります。大腸内視鏡挿入というartを極めるということは、私のもう一つのモットーである検査は「正しく・はやく・美しく」にも通ずると考えます。

 

ちなみに、検査は「正しく・はやく・美しく」という言葉は、私の高校時代の数学の先生が数学は「正しく・はやく・美しく」としょっちゅう仰っていたことから着想を得て作った私の造語です。

 

2019年度はClinical Scienceの実践として多くの実績を残しましたが、2020年度はさらに多くの研究成果を出せるようにすでに準備を進めています。来年の今頃に、より多くの報告ができるよう邁進していく次第です。

 

つきましては、学会シーズンの4-5月と10-11月に私の外来が何度か休診になってしまうことをお許しください。

 

* 2019年度の研究成果は、学会発表12回、論文投稿3本(いずれも国際科学誌)

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