皆さん、こんにちは。小金井つるかめクリニック院長の田中真人です。いつも小金井つるかめクリニックのブログを読んでいただきありがとうございます。
さて今回は睡眠時無呼吸症候群(SAS)についてのお話です。
睡眠中に舌根(舌の根もと)が喉の奥に沈むために気道が塞がれてしまい、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、止まりかけてしまい、突然大きな鼾(いびき)とともに呼吸が再開される症状のことです。10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上もしくは一晩で30回以上ある方はSASの診断が下されます。
睡眠関連呼吸障害の中で最も患者さんが多い疾患です。起床時の熟睡感が得られず、日中の強い眠気や疲労感が伴うため会議中や運転中に突然意識を失うような睡眠に陥ることがあります。
後程説明しますが、代表的な治療方法である持続陽圧呼吸療法(CPAP: continuous positive airway pressure)を受けておられる患者さんは国内で50万人以上いらっしゃいます。
しかし、SASの診断がついた患者さんでも全員が昼間の眠気を感じるわけではないので注意が必要です。
SASは運転能力を低下させますが、特に次のような状況で居眠り運転が生じやすいといわれています。
重症のSASの患者さんは短期間に何度も交通事故を起こすことが多くあります。また、SASの患者さんはSASではない健常な方と比較すると交通事故を起こすリスクが2.4倍高いともいわれています。
SASの治療をしないで放置すると高血圧や糖尿病、不整脈、脳梗塞、虚血性心疾患の発症につながります。また、脳梗塞や虚血性心疾患は運転中の突然死につながる大きな要因です。
① 肥満
健康な方でも仰向けで寝ると舌根が喉の方(背側)に落ちてしまい、上気道や喉が少し狭くなることがあります。肥満の方では喉の周囲に脂肪がついているため、健康な方よりも上気道が塞がりやすくなってしまいます。しかし、日本人では肥満ではなくても重症SASの方が多くみられます。
② 解剖学的異常
上・下顎の大きさや位置異常、または鼻腔が狭い、扁桃肥大、咽頭や喉頭周囲の筋力低下などが発症に影響を及ぼします。
③ 性別・年令
男性患者さんは女性の2~3倍ですが、加齢とともに男女差が小さくなります。更年期以降の女性ではホルモンバランスの変動に伴って発症リスクが上がり、閉経後の女性では10%にSASが認められるとの報告があります
① 簡易検査
写真のような器具を指先につけ、鼻には酸素チューブのような管をあて、睡眠中の気流をモニタリングして無呼吸や低呼吸の回数を測定します。
この検査は器具をつけている時間帯全ての呼吸状態を測定するため、無呼吸や呼吸低下が起きているときに睡眠中か覚醒中かの区別はつきません。
② 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG: polysomnography)
そこで簡易検査の結果によってはPSG検査を追加で受けていただくこともあります。
出典【TEIJIN Medical WEB】
これは脳波を同時に測定することにより、睡眠中に生じる無呼吸や呼吸低下を正確に測定できます。
この検査は通常は1泊の検査入院が必要ですが、当院では前述の簡易検査と同様に器材を貸し出しますので、自宅で手軽に検査を受けることができます。
SASは生活習慣との関連が大きな疾患です。バランスのとれた食事や運動、休養が必要です。特に肥満はSASの発症や悪化に強い悪影響を及ぼします。強い口蓋扁桃肥大の患者さんに対して扁桃摘出術が適応となることもありますが、一般的にその効果は限定的といわれています。
むしろ以下の治療がお勧めです。
・軽症SAS
側臥位(横向き)での就寝やマウスピースを作成して舌の落ち込みを防ぐ方法があります。マウスピースは歯科で顎の形状や歯並び、歯の大きさなどを測定し、型をとっての作成となります。
・中等症から重症SAS
CPAPと呼ばれる器具を使用します。これは鼻マスクをつけて就寝し、気道に軽い陽圧を加えることで舌の隙間から肺に空気を送り込む方法です。
出典【あおぞら湘南クリニック】
出典【TEIJIN Medical WEB】
副作用は殆どなく、即効性のあるとても有効な治療方法ですが、医療機関を毎月受診して直近1カ月の治療効果や装着状況を確認する必要があります。
ただし、CPAPにも問題点があります。それは睡眠時間の70%以上使用できないと有効とは言えない事です。実際にこれが出来るのはCPAP治療中の患者さんの50%位です。CPAP装着に慣れるのは個人差がありますが、数カ月くらいつけていると慣れる方が殆どです。
以上、SASに関するお話でした。
日中、特に午後から会議中や運転中などに突然睡魔に襲われる方、朝起きても熟睡感が少ない方、いびきを指摘されたり自覚されている方はご気軽に当院へご相談ください。
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まとめ
*睡眠時無呼吸症候群(SAS)はいびき、頭痛、眠気などの症状を伴い、交通事故や血管系の疾患につながることがある
*簡易検査、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG: polysomnography)により診断を行い、重症度を判定する
*重症度に応じ、マウスピース、CPAPにより治療を行う。