潰瘍性大腸炎の治療薬 タクロリムス(プログラフ®)について

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潰瘍性大腸炎の治療薬 タクロリムス(プログラフ®)について

皆様こんにちは。小金井つるかめクリニック 消化器内科の川上智寛です。今回は治療薬シリーズの続きで、「タクロリムスについてご説明します。

 

タクロリムスとは(商品名:プログラフ®)

2009年に潰瘍性大腸炎に保険適応となった薬剤です。

 

タクロリムスは1984年に茨城県つくば市の土壌から分離された放線菌の代謝産物として発見されました。

 

免疫抑制薬であり、日本では1993年に肝移植の拒絶反応の抑制に使用され、それ以降腎臓・心臓・肺・膵臓などの臓器移植後の拒絶反応の抑制に広く用いられるようになりました。

 

潰瘍性大腸炎以外では、関節リウマチや重症筋無力症などの自己免疫性疾患の治療薬としても使用されています。

 

タクロリムスの作用機序

タクロリムスはカルシニューリン阻害薬です。カルシニューリンとは、細胞内で情報(シグナル)伝達を行う際に重要な役割を果たしており、特に免疫担当細胞(T細胞)の活動の制御に重要です。

 

タクロリムスはT細胞内に取り込まれると、細胞内でFKBP-12と呼ばれるタンパク質と複合体を形成し、これがカルシニューリンに結合します。本来カルシニューリンは、その機能を発揮するために「脱リン酸化反応」と呼ばれる反応を起こす必要があり、通常は細胞内のカルシウム濃度が上昇すると、この脱リン酸化反応が起こりますが、カルシニューリン・FKBP-12複合体はカルシニューリンの脱リン酸化反応を阻害する作用があります。

 

カルシニューリンの作用が発揮される局面では、そのシグナル伝達の下流で、nuclear factor of activated T-cells(NFAT)と呼ばれるタンパク質が細胞質から核内に移行し、直接的に各種遺伝子の発現を調整します。カルシニューリンの作用がタクロリムスにより阻害され、NFATの核への移行が抑制され、インターロイキン2(IL-2)などの各種サイトカインの発現が抑制されます。

 

図示すると以下のようになります。

 

タクロリムスの作用機序

IL-2は、T細胞が活性化すると放出されるサイトカインの代表格です。サイトカインとは、リンパ球が他の離れた細胞に影響を与えるための伝達物質(微小なタンパク質)であり、他の細胞の増殖を促したり、活性化のトリガーとなったり、逆に機能を抑制したり、サイトカインの種類によってその作用は様々です。サイトカインのうちIL-2は、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞、B細胞などに働きかけ、それぞれの細胞の機能を高めます。

 

細胞障害性T細胞とNK細胞は細胞性免疫と呼ばれる免疫応答に関わり、B細胞は液性免疫(抗体産生による免疫応答)と呼ばれる免疫応答に関わります。

 

潰瘍性大腸炎では、T細胞とB細胞が大腸の粘膜内で過剰に活性化することで炎症を引き起こすと考えられており、これらの細胞の免疫応答を鎮静化することが病態の改善に有効です。

 

タクロリムスによりT細胞から放出されるIL-2をはじめとするサイトカインの産生が抑制されると、上記の機構で細胞性免疫・液性免疫の両方を抑制し、潰瘍性大腸炎における炎症を抑える効果を発揮すると考えられています。

 

タクロリムスの使用方法

潰瘍性大腸炎の寛解導入療法として使用します。

 

<投与方法> 1日2回、朝・夕食後に経口投与。

 

また、同じ量を内服しても人によってタクロリムスの血中濃度が大きく変化することがあるので、血中濃度の測定が必須です。具体的には、

 

・投与開始~2週間の血中トラフ値:10-15 ng/ml

・投与開始2週間以降の血中トラフ値:5-10 ng/ml

 

※トラフ値:薬を反復投与した際の最低血中濃度のこと。この場合、薬剤投与直前に採血をした血中濃度のことです。

 

血中トラフ値を見ながら内服する量を加減していく必要があります。

 

保険適応上、『潰瘍性大腸炎では、通常、3ヵ月までの投与とすること』という注釈がついており、薬剤の使用期間に制限があります。つまり、潰瘍性大腸炎の寛解導入療法としては使用を認められているが、寛解維持療法としての使用は認められていない、ということです。

 

タクロリムスで炎症のコントロールがついたのち、どのような薬剤で寛解を維持していくかを見越して治療を行っていく必要があります。

 

たとえば、以前ブログで紹介した「アザチオプリン」を併用して維持していく場合、アザチオプリンの効果がでてくるまで約2-3か月必要になるため、タクロリムスの治療を開始して効果がみられたあたりの早めの段階でアザチオプリンの追加を考えます。

 

タクロリムスの副作用

  • 副作用として手の震え、ほてり、高血糖、腎機能障害、心毒性、感染症が挙げられます。

     

    血中濃度が高いと上記の副作用がでてしまうため、多くの場合は投与量の減量か中止をすることで対処しますが、このような副作用は基本的に回復します。

     

    血中濃度測定によって治療域にコントロールできているかモニタリングできることが、この薬剤のメリットであると思います。可能な限り早く治療域に到達し、それを維持したうえで、安全のために治療域の上限を超えないように注意しながら、適宜、血中濃度測定を行い、薬剤用量調整をする必要があります。

     

    そういう意味で、タクロリムス導入を行う際は迅速検査で同日に薬剤血中濃度が測定できるシステムがあることが望ましいですが、当院は外注検査で測定することになるため結果まで数日かかってしまうため、導入の際は大学病院などの基幹病院で行われることが多いです。

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まとめ

  • * タクロリムスは「日本で生まれた医薬品」です。
  • * 薬剤のトラフ値を測定し、治療域に維持して薬剤用量を調整する必要があります。
  • * 適切な血中濃度測定&薬剤調整で、副作用の発現なく使用が可能です。

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