甲状腺疾患について

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甲状腺疾患について

 皆様こんにちは、小金井つるかめクリニック 糖尿病内科の深石貴大です。

 今回は甲状腺疾患について解説します。

甲状腺とは

 健康診断などで「甲状腺が腫れています」といった通知をもらったことのある方もいらっしゃると思います。甲状腺は首の喉ぼとけの下にある、蝶々のような形をした臓器です。よく顎のあたりを指さして「甲状腺の病気でしょうか」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいますが、もう少し下の方にあります。

 甲状腺は体の元気をつかさどる甲状腺ホルモンを分泌し、体調を整えている重要な臓器です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)について

 甲状腺機能亢進症とは、読んで字のごとく甲状腺の機能が亢進(上昇)している状態です。先述の通り甲状腺ホルモンは体の元気をつかさどりますので、過剰に分泌されると体が元気すぎる状態になってしまいます。甲状腺機能亢進症といっても色々な原因があるのですが、その中でもメジャーなバセドウ病について解説します。

 バセドウ病は、免疫系が誤って甲状腺を攻撃することで、甲状腺が過剰にホルモンを分泌してしまう病気です。原因は完全には解明されていませんが、他の自己免疫疾患と同様、女性に多い病気です。

 

 バセドウ病の主な症状には、次のようなものがあります。

 

・体重減少:食欲が増加しているにもかかわらず、体重が減少することが多いです。

・心拍数の増加:心拍数が速くなり、動悸を感じることがあります。

・発汗と暑がり:汗をかきやすくなり、暑さを感じやすくなります。

・手の震え:手指の細かい震えが見られることがあります。

・下痢: 消化管の動きが増し、下痢になりやすいです。

・疲労感と筋力低下:全身の疲労感や筋力の低下が見られます。

・目の異常:眼球突出や目の腫れ、視力の変化など、眼症状が出ることがあります。これをバセドウ眼症と呼びます。ステロイドによる治療や、手術を要するケースもあります。

高尿酸血症・痛風発作の治療

 バセドウ病の治療としては、メチマゾールやプロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬と呼ばれる、甲状腺ホルモンの生成を抑制する薬がまず用いられます。

 有名な副作用として以下のものがあり、そのため、開始後2-3ヶ月は、2週間に1回採血を受けて頂き副作用の有無をチェックする必要があります。

 

・無顆粒球症:体を外敵から守る白血球の数が減ってしまう状態です。細菌やウイルスへの抵抗力がかなり低下する危険な状態で入院が必要ですので、もしメルカゾール内服後3ヶ月間に発熱した場合、採血を受ける必要があります。

・肝障害:肝臓の数値が高くなっていないか採血でチェックします。肝臓は沈黙の臓器とも言われるため、数値が上がっていても自覚症状は伴わないことがほとんどですが、高いまま放置するのは危険なため、経過次第では薬を変更します。

・かゆみ・皮疹:上記2つに比べると命に関わるものではありませんが、頻度としては一番多いです。アレルギー薬などで経過を見ることが多いですが、改善しない場合は薬を変更することがあります。

 

 バセドウ病の治療は、よくなったからと薬をやめてしまうとぶり返すことが多く、年単位の根気強い治療が必要ですが、多くの場合は飲み薬だけで病状を落ち着かせることができます。また、喫煙は、バセドウ病眼症と呼ばれる、眼球突出などに代表される眼の合併症のリスクとなるため、禁煙が重要です。

 内服薬のみで治療不十分の場合、放射性ヨウ素を服用することで甲状腺細胞を破壊しホルモンの過剰分泌を抑える放射性ヨウ素療法(アイソトープ治療)、甲状腺の一部または全部を外科的に摘出する手術が選択されることもあります。

甲状腺機能低下症(橋本病)について

 甲状腺機能低下症は、甲状腺機能亢進症の逆で、読んで字のごとく甲状腺の機能が低下している、つまり甲状腺が十分な量のホルモンを産生しなくなる状態です。甲状腺ホルモンは体の元気をつかさどりますので、体の元気がなくなる状態になってしまいます。

 甲状腺機能低下症の主な原因は、免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、その機能を低下させてしまう自己免疫疾患である橋本病です。また、放射線治療や手術によって甲状腺の一部または全部を失った場合、ヨウ素欠乏症、一部の薬剤(例えばリチウム)も原因となります。

 甲状腺機能低下症の主な症状には以下が含まれます。概ね甲状腺機能亢進症の逆です。

 

・疲労感: 甲状腺ホルモンが不足すると代謝が低下し、慢性的な疲労を感じます。

・体重増加: 代謝が遅くなるため、体重が増えやすくなります。

・寒がり: 体温調節がうまくいかず、寒さを感じやすくなります。

・乾燥肌: 皮膚が乾燥し、かさかさすることがあります。

・便秘: 消化管の動きが遅くなり、便秘になりやすいです。

・抑うつ、記憶力低下: 気分が落ち込みやすくなり、うつ状態になることがあります。

・女性の場合、生理不順: 生理のサイクルが乱れやすくなることがあります。

 

 治療には、甲状腺ホルモン補充療法が一般的です。最も一般的な薬は合成された甲状腺ホルモンであるレボチロキシンで、適切な量を服用することで正常なホルモンレベルを維持することができます。

妊娠と甲状腺機能について

 甲状腺ホルモンは体の代謝を調節するホルモンであり、妊娠の進行と胎児の発育に大きな影響を与えます。

 妊娠初期には、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの分泌が一時的に増加します。また、エストロゲンの増加によって、甲状腺ホルモンの結合タンパク質が増え、総甲状腺ホルモン量が変動します。これらの変化は一時のもので、特に介入する必要はありません。

 甲状腺機能低下症は、妊娠中の女性に特に注意が必要です。甲状腺ホルモンが不足すると、流産、早産、妊娠高血圧症候群、低出生体重などのリスクが高まります。また、胎児の神経発達にも影響を及ぼし、知能発達障害を引き起こす可能性があります。TSH(甲状腺刺激ホルモン)2.5以下の状態が妊娠に適した状態と言われており、普通に生きていくには全く支障のない甲状腺機能でも、妊娠のために一時的に甲状腺ホルモンを補充することはよくあります。

 一方、甲状腺機能亢進症も妊娠に影響を与えます。流産、早産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群などのリスクが増加します。甲状腺機能亢進症の治療には、妊娠中でも安全とされる薬剤が使用されますが、適切な管理が必要です。

甲状腺腫瘍について

 甲状腺腫瘍はその多くが良性ですが、たまに悪性のこともあり決して侮れません。一般的に、大きさが2㎝を超えている場合は針を刺して細胞を取り良性・悪性を判定する穿刺吸引細胞診が勧められます。ですが、2㎝に満たない場合でも、エコー上悪性が疑わしい場合は穿刺吸引細胞診を行うことがあります。当院では穿刺吸引細胞診はできないため、総合病院の耳鼻咽喉科を紹介させていただくことが多いです(耳鼻咽喉科は耳、鼻だけではなく、甲状腺のような首回りの臓器にも精通しています)

まとめ

  • *甲状腺は首の喉ぼとけの下にある、蝶々のような形をした臓器で、体の元気をつかさどる甲状腺ホルモンを分泌し、体調を整えている
    *甲状腺ホルモンが過剰に分泌され体が元気すぎる状態になるのが甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、逆が甲状腺機能低下症(橋本病など)
    *妊娠に際し甲状腺機能は重要であり、必要に応じてホルモン補充などを行う

糖尿病代謝内科のページはこちらです。


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