潰瘍性大腸炎の治療薬 ウステキヌマブ(ステラーラ®)について

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潰瘍性大腸炎の治療薬 ウステキヌマブ(ステラーラ®)について

皆様こんにちは。小金井つるかめクリニック 消化器内科の川上智寛です。今回は治療薬シリーズの続きで、「ウステキヌマブについてご説明します。

ウステキヌマブとは(商品名:ステラーラ®)

ウステキヌマブ(ステラーラ®)はヒト型抗ヒトIL-12/23モノクローナル抗体製剤です。

 

乾癬(2011年1月に承認)やCrohn病(2017年3月に承認)にこれまで使用されていましたが、2020年3月にウステキヌマブの適応追加があり、「既存治療で効果不十分な中等症~重症の潰瘍性大腸炎」が追加承認になりました。

 

潰瘍性大腸炎のこれまでの治療薬とは異なる新しい作用機序を有する薬剤であり、治療の選択の幅が増えました。

 

ウステキヌマブはトランスジェニック法による抗体製法で作られており、「免疫原性が軽減」されています。免疫原性が低いと“薬物に対する抗体=抗薬物抗体(anti-drug antibody: ADA)”が作られにくくなり、継続して治療している間に効果が得られなくなる(二次無効)ことを減らすことができます。二次無効は、以前より潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されている抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ等)を長期に使用することで生じる現象として報告されており、ADAの出現を予防するために免疫調整薬(チオプリン製剤)の併用を行われるケースもあります。

 

ウステキヌマブの場合は、抗TNFα抗体製剤の報告と比べてもADAの出現率は低く、免疫調整薬の併用がなくとも差は認めないとの結果が報告されています。

 

ウステキヌマブの作用機序

潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患(IBD)の患者さんの腸管では、免疫の異常により、炎症に関与するインターロイキン(IL)や腫瘍壊死因子α(TNF-α)などの物質が作られ、「炎症を起こす細胞」を活性化することにより腸管に炎症が起きることが分かっています。

 

インターロイキンのうち、IBDの病態には特にIL-12とIL-23が深く関わっているとされており、IL-12とIL-23に共通するタンパク質である“p40サブユニット”に対する抗体製剤であるウステキヌマブが開発されました。ウステキヌマブがIL-12とIL-23の働きを抑え、炎症のシグナルを弱めることで炎症を鎮静化させ腸管の炎症をコントロールし、腹痛や下痢などの症状を改善させることができます。

ウステキヌマブの作用機序

ウステキヌマブの使用方法

他の生物学的製剤と同様に「結核」と「B型肝炎ウイルス」など感染症の検査を行います。免疫を抑える作用があるため、すでに結核やB型肝炎ウイルスに罹患している場合、病原体の「再活性化」が起きてしまうリスクがあり、事前にこれらの検索は必須です。

 

〔初回投与〕 点滴注射

 

体重別に薬剤投与量が決められており、1時間以上かけて点滴します。

 

ウステキヌマブの使用方法

〔2回目以降〕

 

点滴注射をしてから8週間後にウステキヌマブ90mgを皮下注射します。1シリンジ=45mgなので、2本皮下注射することになります。以降、12週間隔で2本ずつ皮下注射を継続します。

 

効果減弱した場合は投与間隔を8週間に短縮できます。

 

  • ※皮下注射はインフルエンザの予防接種と同じ注射のやり方です。

    ※ウステキヌマブの注射は医療機関で医療従事者が行います。自己注射ではありません。

     

ウステキヌマブの副作用

・アナフィラキシー(発疹や蕁麻疹など)

・重篤な感染症(ウイルス、細菌や真菌など)

・結核

・間質性肺炎

・悪性腫瘍(がん)

 

ウステキヌマブは免疫抑制効果がありますので、感染症や悪性腫瘍(がん)の発生リスクを高める懸念が指摘されていました。

 

乾癬領域で使用された方の研究報告によると…

 

重症感染症の発生率はインフリキシマブの約1/3, 他の生物学的製剤の約1/2であり、ウステキヌマブは生物学的製剤の中ではリスクの低い製剤と考えられています(参考1)。

 

また、悪性腫瘍(がん)についても抗TNFα抗体製剤(オッズ比 1.54)に比べてウステキヌマブ(オッズ比 0.98)はオッズ比が低く、ウステキヌマブ使用によるがんの発生リスクは低い可能性も報告もされています(参考2)。

 

参考1:Papp K, Gottlieb AB, Naldi L, et al : Safety Surveillance for Ustekinumab and Other Psoriasis Treatments from the Psoriasis Longitudinal Assessment and Registry (PSOLAR). J Drugs Dermatol 14 ; 706―714 : 2015

 

参考2:Fiorentino D, Ho V, Lebwohl MG, et al : Risk of malignancy with systemic psoriasis treatment in the Psoriasis Longitudinal Assessment Registry. J Am Acad Dermatol 77 ; 845―854.e5 : 2017

 

これらの報告をまとめると、添付文書に記載がある副作用に注意は必要であるものの、ウステキヌマブは他の生物学的製剤と比較して感染症などのリスクは低く安全に継続可能な製剤である可能性があります。

 

潰瘍性大腸炎への治療薬としては2020年3月に追加承認になったので、私自身はCrohn病の患者さんに投与したケースがほとんどです。薬剤の効果について個人的な見解は「比較的ゆっくり効くイメージだが、効果がでてくれば良い状態をそのまま維持できる」という印象です。

 

免疫調整剤の併用をしなくとも、抗薬物抗体(ADA)の産生が少ないというのは、長期に同一薬剤で寛解(=良い状態)を維持していく上で大事な要素です。効果減弱がある場合は投与間隔の短縮もオプションとしてとれますし、抗TNFα抗体製剤とは作用機序が異なるので、他の薬剤で悪化がみられるときの“2番手”の薬として使用も考えられます。今後の症例数の蓄積が必要ですが、潰瘍性大腸炎に対して薬剤選択の幅が広がることは良いことだと感じています。

 

 

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まとめ

  • * ウステキヌマブは2020年3月に潰瘍性大腸炎が追加承認になった新規薬剤である。
  • * クローン病や潰瘍性大腸炎より先行して使用可能であった乾癬に対する使用報告をみる限り、他の生物学的製剤と比較しても副作用が少ないと考えられる。

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