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内視鏡検査における質の管理 〜ダブルチェックの重要性〜

皆さまこんにちは、小金井つるかめクリニック院長の石橋です。

 

今回は先日Endoscopy International Open誌に受理されました論文の紹介を通して、内視鏡検査のダブルチェックの重要性について、「内視鏡検査の質の管理」という観点からご説明したいと思います。なお、私石橋は本年3月をもって小金井つるかめクリニックの院長を退職いたしますので、これが当院で私が書く最後のブログになります。このブログの最後で、みなさまにご挨拶をさせて頂きたいと思います。

対策型胃癌検診における精度管理

内視鏡検査は、多くの場合一人の内視鏡医師によって実施され、検査を行なった医師が内視鏡所見をレポートとして記載します。内視鏡医師によっては、大学病院や地域の基幹病院、専門病院などで正しい内視鏡検査の実施方法だけでなく、所見の解釈の仕方や検査後のレポートの書き方の訓練を積む機会がありますが、中にはそういった機会がないまま自己流で内視鏡検査を実施する医師もいます。

 

昨今、対策型胃癌検診として、バリウム検査ではなく最初から胃内視鏡検査を実施する自治体が増えてきました。多摩地区においても、当院のある小金井市では、2020年度より対策型胃癌健診で胃内視鏡検査を実施することができるようになりました。

 

この対策型胃癌検診は、企業や健保が費用負担をする任意型健診ではなく、公費が投入される公的事業という側面があります。癌の早期発見とそれによる死亡率減少を狙う公衆衛生的役割が強いことを意味します。したがって、対策型胃癌検診に関わる医師は、高度な内視鏡専門技術を要したプロフェッショナル集団である必要があり、事業に参加する要件として、たいていの自治体では「内視鏡専門医」「消化器病専門医」「消化器癌健診専門医」などの専門医保有医師であることが義務付けられています。

 

一方で、急速に対策型胃癌検診が広まる中で、その担い手となる医師が不足している実態があり、事業に関わる医師を限定し過ぎると事業そのものが成り立たないというジレンマもあります。そこで、専門医保有医師でなくとも、おおむね年間100件以上の内視鏡検査を行っていればよしとする自治体もあります。

 

年間100件の内視鏡検査数というのは、せいぜい月間810件程度ですから、とても十分数の検査を行っている医師とは言えません。はたしてこのような医師が各種専門医を持つ医師と同じクオリティの内視鏡検査を実施することができるのでしょうか?

 

こういった懸念を解消するために対策型胃癌検診マニュアルでは、内視鏡検査のダブルチェック(二次読影)を必須とされています。

内視鏡検査のダブルチェックとは

内視鏡検査のダブルチェックとは、検査の際に撮像された画像データを別の医師が見直す(読影する)ことで、胃癌などの疾患の見逃しがないか確認することを言います。

 

実際のダブルチェックにあたっては、画像データ全てを見直すとともに、記載されたレポートにも目を通し、レポートに抜けがないかもあわせてチェックします。ダブルチェックした内容は、実際に検査を行った医師にフィードバックされます。また、自治体によっては、画像の質そのもの(例えば画像のブレがないか、胃の粘液の除去が十分かどうか、盲点がないか=網羅性が十分か)もレビューし、必要に応じて不十分な箇所を検査医師にフィードバックする試みを行っています。

ダブルチェックをすることの意義

ダブルチェックをすることの意義は大きく2つあります。

 

第一に、胃癌などの病変の見逃しがあった際に、ダブルチェックでその病変の拾い上げを行うことです。実際多くの自治体から、初回検査時に胃癌の指摘がなくとも、ダブルチェックの際に胃癌を疑う病変を新たに指摘されるという事例が報告されています。

 

対策型胃癌健診は多くの自治体で隔年(1年おき)に実施を推奨されており、1回目の内視鏡検査で胃癌の見逃しがあると、次回の内視鏡検査は早くとも2年後になります。胃癌発生の自然史を考えると、この2年間で胃癌が進行する可能性は十分あり、いかに胃癌の見逃しを少なくするかが対策型胃癌検診の精度管理上重要です。

 

第二の意義として、検査医師の内視鏡検査の質の担保という点が挙げられます。他の内視鏡医師から自分の撮影した画像をレビューされる、というのは大きなプレッシャーであると同時に、精確な検査を行う動機付けにもなります。一方で、この意義に関しては定量化することが難しいという側面がありました。今回私たちは、内視鏡のダブルチェックを通して「検査医師が精確な検査を行う動機づけ」という点を重点的にコントロール可能であることを見出し、論文として報告しましたのでご紹介します。

Endoscopy International Open誌への受理論文のご紹介

私たちは、胃内視鏡検査終了後に、その検査の画像とレポートのセットを同日中に別の内視鏡専門医がレビューし、不足のある点についてリアルタイムにフィードバックを行うというシステムを構築しました。論文中で、このシステムを「Quality Management System: QMS」と呼称しています。ただ単に内視鏡画像のダブルチェックをするだけでなく、検査の質を管理するために積極的に検査医師に関わっていくシステムがQMSです。

Endoscopy International Open誌への受理論文のご紹介

Ishibashi F et al. Endoscopy International Open. 2021

本研究では、QMSの導入前後の4年間に実施された胃内視鏡検査で、インターバル胃癌の発見数を比較しました。インターバル胃癌とは、本研究では1年前に受けた胃内視鏡検査では指摘されなかった胃癌のことと定義しています。前年の検査では小さ過ぎて発見できなかったケース等が含まれ、インターバル胃癌が多く見つかることは、それだけ検査の精度が高いと言うことができます。

 

QMSを導入前は、36189件の内視鏡検査で、11症例のインターバル胃癌を認めた一方、QMS導入後は、38290件の内視鏡検査で、32症例のインターバル胃癌が発見されました。

 

毎年検査を定期的に受けて頂く場合に、ダブルチェックを用いた内視鏡検査の質の管理が重要であることが示されました。

ダブルチェックの問題点

私たちが報告したQMSは、当院における常勤の内視鏡専門医3名によるダブルチェックを主体としたシステムです。1日およそ4050件の内視鏡検査を同日中にレビューするのはなかなか骨の折れる作業で、時間もかかります。この労力をいかに確保するかが最も大きな問題点です。実際、多くの自治体でダブルチェックを行う医師の確保に難渋しているという実態が明らかになっています。

 

さらに、ダブルチェックを行う医師が対策型胃癌検診の参加医師と重複することが多い、ということも問題として挙げられます。専門性の低い内視鏡医師の技能をカバーすることを目的にダブルチェックは機能するはずですが、そのダブルチェックを行う医師が専門性が低いと、当初の意味をなさない可能性があります。

ダブルチェックの運用における今後の展望

上述したようなダブルチェックの問題点を解決する一つの方向性として、人工知能(AI)の活用が検討されています。すでに胸部単純写真(レントゲン)による肺癌検診においてはAIによる一次スクリーニングが実用化されていますが、対策型胃癌検診においても、内視鏡画像をAIが自動判定し、胃癌の見逃しがないかダブルチェックのサポートができる時代がくるかもしれません。

 

とは言っても、AIは人の眼の代わりになるわけではありません。AIはあくまで内視鏡画像が適切に撮影されているか、検査の質の判定をする役割にとどまるものと考えます。

ご挨拶

私は20194月に小金井つるかめクリニックの院長に就任後、3年間の職務の後、2022年3月をもって退職となります。20198月から始めたクリニックブログも、今回のブログで45回目となりました。これほど長く連載できると思いませんでしたが、私以外の常勤の先生、とくに消化器病センター長の川上智寛先生と糖尿病代謝内科の深石貴大先生にも助けられ、常に最新の医療ネタを提供することができたと思っております。

 

当初は細々と始めたクリニックブログも、202112月には、月間40000回のページビュー(ブログのページへのアクセス数)をしていただくまでに成長し、多くの方の目にとまるようになったのではと思います。実際、クリニックブログをご覧になって病気の相談にいらっしゃる方も次第に増え、正しい知識を世に広めることの重要性を身をもって感じています。

 

4月以降は新院長先生ならびに現在の常勤医師で最新の医療に関する話題の連載は継続いたしますので、引き続きお読み頂ければ幸いです。

 

ちなみに私石橋は、4月以降も土曜日午前の外来診療と午後の内視鏡検査の担当は続けます。お悩みがある方は、ぜひ土曜日の午前にご相談にいらしてください。また、これまで当院で私が担当医として診察させて頂いていた皆様も、引き続き土曜午前の外来で担当させて頂きますので、よろしくお願い致します。

まとめ

  • * 対策型胃癌検診において検査の質を管理するために内視鏡画像のダブルチェックが行われる

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